2020 Fiscal Year Research-status Report
猛毒種子の採食がヤマガラ体内の寄生虫・腸内微生物に及ぼす影響の解明
Project/Area Number |
19K06846
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Research Institution | National Institute for Environmental Studies |
Principal Investigator |
吉川 徹朗 国立研究開発法人国立環境研究所, 生物・生態系環境研究センター, 特別研究員 (00646127)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
上田 恵介 立教大学, 名誉教授, 名誉教授 (00213348)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 種子散布 / 寄生者 / メタバーコーディング / 相利共生 / 貯食 / 動植物間相互作用 |
Outline of Annual Research Achievements |
シキミ科の樹木シキミIllicum anisatumは、果実・種子・葉などの全植物体に神経毒アニサチンを含む猛毒植物である。だがシジュウカラ科の鳥類ヤマガラSittiparus variusは、このシキミの種子を食べ、一部を林床に貯えることで植物の分散に寄与している。ヤマガラはシキミにとって決定的な種子散布者であり、この樹木と密接な相利関係を結んでいることがわかっている。 本研究はこのヤマガラとシキミの特異な相利共生関係に注目し、その生態と進化のプロセスの解明を目指す。特に注目するのは、この相利関係がヤマガラと他の生物の相互作用に与える波及効果である。本研究では、ヤマガラの摂取した神経毒アニサチンが、寄生者を減少させる駆除効果をもつという仮説を立て、これを検証する。シキミ食の程度の異なるヤマガラ集団において糞を採取し、DNAメタバーコーディングなどの手法を用いて寄生者の多様性およびアバンダンスを評価し、上記の仮説を検証する。 今年度も、昨年度同様、伊豆半島をはじめとする各地の森林において、かすみ網を用いてヤマガラならびに近縁の鳥の捕獲を行い、捕獲した個体から糞および羽毛などの体組織を採取した。また日本各地の共同研究者からも各種鳥類の糞の提供を受け、糞サンプルの蓄積を進めた。これらの糞サンプルの一部についてDNAメタバーコーディング分析を試みた。分析条件を検討した結果、さまざまな内部寄生虫の検出に成功し、手法の有効性を確認した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
昨年度の調査で、捕獲個体からの糞のサンプリングについては効率的な手法を確立できた。今年度はDNAメタバーコーディングによる糞からの内部寄生者の検出について、最適な分析条件の検討を進めた。その結果、分析条件を確認し、ヤマガラをはじめとする様々な鳥類において、条虫綱のサナダムシ類やアピコンプレックス門のコクシジウムなどの多様な寄生者のOTUを検出することができた。現在これらの寄生虫群集データを解析中である。なおコロナ禍により鳥類の捕獲調査に制限がかかったため、得られた糞サンプル数は予定を下回っている。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究で、DNAメタバーコーディングにより鳥糞中の寄生虫検出が可能であることが確認できた。この手法を用いてヤマガラ個体群間での、またはヤマガラと他種の間での検出寄生者群集の比較を進めており、この成果を日本鳥学会などで発表予定である。今後はヤマガラのシキミ食の程度と寄生者相との関連を明らかにするべく、さらなる糞サンプルの拡充を進める。昨年度より各地の研究者に協力依頼することで糞サンプルの拡充を図ってきたが、今年度もできる限り野外調査を進め鳥類の糞サンプルを収集するとともに、飼育個体を用いた実験なども追加で検討している。
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Causes of Carryover |
コロナ禍によりヤマガラの捕獲調査を一部中断した結果生じた額は、次年度の捕獲調査などに充てる。
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