2021 Fiscal Year Research-status Report
ハゼが海底につくる「ミステリーサークル」の適応的意義と形成ロジックの解明
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19K06847
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Research Institution | Natural History Museum and Institute, Chiba |
Principal Investigator |
川瀬 裕司 千葉県立中央博物館, 分館海の博物館, 主任上席研究員 (10270620)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 繁殖生態 / 卵保護 / ハゼ科魚類 / 適応度 / 配偶者選択 / 3D |
Outline of Annual Research Achievements |
研究対象種のサキンハゼHazeus ammophilus Allen and Erdmann, 2021(トンガリハゼ属の1種-3 Oplopomos sp. 3とされていた種が新種記載された)の巣の周りには,放射状に掘られた溝が並んでいる.その適応的意義と形成ロジックを解明することを目的として研究を行っている. 沖縄県東部沿岸で潜水により本種のフィールド観察を実施する予定であったが,新型コロナウィルス感染防止対策のため今年度も全てキャンセルとなった.このため,現地のダイバーに毎月1回,水深約8 mの定点観察エリアで本種の生息状況と繁殖の有無の確認を依頼した.また,本種の採集を依頼して,千葉県立中央博物館分館海の博物館内で水槽飼育して行動観察を行った. 定点観察によると,本種は年間を通してオスが海底で営巣しているのが確認された.ただし,個体密度には変動が見られ,11月~1月にかけて低くなった.本種が利用する産卵基盤は二枚貝の殻が最も多く,サンゴ片や落葉なども見られた.その周りには放射状の溝が形成されている場合と不鮮明な場合があった. 水槽観察によると,オスは産卵基盤として使用する二枚貝の殻に対して,以下の行動が観察された.(1)貝殻の下部で砂を掘り,内側を上にした貝殻の縁を砂底面まで下げる,(2)オスは各鰭を使って貝殻から外側に向かって砂を掘り進める,(3)この行動をあらゆる方向に向かって行うため,貝殻の周りには放射状の溝が並ぶ,(4)掘った砂が貝殻の内側に溜まるだけではなく,オスが口で砂を運んで貝殻にかけるため,貝殻は完全に砂に埋没する,(5)貝殻に溜まった砂を鰭や口を使って完全に除去する.以上の行動を1日に数回繰り返し,飼育中継続して巣を維持した.オスは同居のメスに対して連日求愛するがメスの産卵間隔はおよそ10日で,産卵前以外はオスを避ける行動が観察された.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
サキンハゼの潜水調査を沖縄で実施する予定であったが,新型コロナウィルス感染防止対策により自ら実施できなかったため,フィールド観察に基づく生態学的研究が制限された.
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Strategy for Future Research Activity |
昨年度に引き続き新型コロナウィルス感染対策の影響により,今年度もいつからフィールド調査を開始できるか全く目途が立たない状況である. このため,水槽観察による行動観察を継続するとともに,標本による成長・成熟に関する研究を進めていく予定である.
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Causes of Carryover |
新型コロナウィルス蔓延防止対策のため,本研究でメインとなるサキンハゼのフィールド調査が全てキャンセルとなり,それに関わる旅費等の支出が0となってしまった. 本年度も引き続きフィールド調査が難しいと思われるため,研究方法の一部を飼育観察に変更するなどして対応する予定である.
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Remarks |
現在取り組んでいる研究プロジェクトや最新の研究成果を紹介
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