2022 Fiscal Year Research-status Report
ハゼが海底につくる「ミステリーサークル」の適応的意義と形成ロジックの解明
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19K06847
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Research Institution | Natural History Museum and Institute, Chiba |
Principal Investigator |
川瀬 裕司 千葉県立中央博物館, 分館海の博物館, 主任上席研究員 (10270620)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 繁殖生態 / ハゼ科魚類 / 適応度 / 配偶者選択 / 卵保護 / 3D |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では,サキンハゼHazeus ammophilus Allen and Erdmann, 2021が巣の周りに形成する放射状の溝の適応的意義と形成ロジックを解明することが目的である.沖縄県東部沿岸で本種の潜水観察を実施する予定であったが,新型コロナウィルス感染防止対策のため今年度も自粛せざるを得なかった.このため,これまでに撮影した映像や採集した標本により,産卵基盤(巣)と放射状構造の大きさと形状を計測するとともに,巣に産まれた卵の発生段階や孵化仔魚の全長などを明らかにした. サキンハゼは,二枚貝の貝殻や落葉をはじめ,空き缶やビニル板など様々なものを巣として使用していた.巣の大きさには大小ばらつきが見られるが,平均すると長径50 mm × 短径24 mmであった.巣の周りに形成される放射状の溝は,巣を含めて平均187 mm × 146 mmの範囲に形成されていた.同一日に営巣されていた巣を調べたところ,卵のある巣とない巣が見られた.また,産み付けられていた卵の発生段階は,同一段階のみの巣と,複数の段階が含まれている巣が見られた.これらのことから,オスは複数のメスを自分の巣に誘って産卵していること,産卵は1日だけではなく,連日行われていることが示唆された.また,卵の有無と,巣の周りに形成される放射状構造の有無との間には,明瞭な関係は認められなかった.本種の卵は粘着糸のある沈性粘着卵で,長径0.74 mm × 短径0.49 mmの紡錘形の形状であった.採集時の刺激で孵化した仔魚の全長は1.74 mmであった.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
サキンハゼの潜水調査を沖縄で実施する予定であったが,新型コロナウィルス感染防止対策により自粛したため,フィールド観察に基づく生態学的研究が進まなかった.
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Strategy for Future Research Activity |
新型コロナウィルス感染対策が緩和されたことから,今年度はフィールド調査を再開して補充データを取り,本研究を完結させていく.
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Causes of Carryover |
新型コロナウィルスにより,フィールド調査に遅延が生じたこと,本研究の成果を発表する予定であったインド・太平洋魚類国際会議が2023年に延期されたことから,次年度に使用する研究費を留保した.
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Remarks |
現在取り組んでいる研究プロジェクトや最新の研究成果を紹介
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