2020 Fiscal Year Research-status Report
Evolutionary dynamics of sexual and asexual lineages of pea aphid in coexistence regions
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19K06848
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
秋元 信一 北海道大学, 農学研究院, 教授 (30175161)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
神戸 崇 北海道大学, 農学研究院, 専門研究員 (40648739)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 無性生殖 / 有性生殖 / クローン / エンドウヒゲナガアブラムシ / マイクロサテライト / 系統樹 / 混生 |
Outline of Annual Research Achievements |
2019年と2020年において,青森県八戸市馬淵川河川敷において,カラスノエンドウとアカツメクサからエンドウヒゲナガアブラムシを採集し,6遺伝子座の遺伝子型決定を通じてクローンの多様性と季節による変動を調査した.この地で有性生殖と無性生殖の混成地帯が2006年および2008年に発見されてから10年以上経って,有性/無性クローンの混成が継続しているか否かを調査するのが第一の目的であった.計235個体を分析した結果, 10年以上経った2019年,2020年ともに,全ての季節で混成状態が確認できた.無性タイプの最も主要なクローン(MLG9)は2006年と同様に確認され,現在も集団のメインなタイプとなっており,全ての季節で確認できた.一方で,消失した無性クローンや新たに加入したと思われる無性クローンも確認できた. MLG間のshared allele distance(DAS)を計算し、近隣結合樹作成したところ,「有性生殖クローンからなる系統」と「無性生殖とその子孫からなる系統」が大きく2つに分岐した.興味深いのは,10年以上前から存続してきた無性クローンと単系統群を構成したいくつかの近縁クローンが見出されたことである.こうしたクローンの出現は,無性生殖クローンが突然変異を起こした結果出現したか,あるいは無性タイプが産出したごくわずかな有性世代が他の有性クローンと交配した結果生じたと推測された.従って,無性生殖タイプから有性生殖への遺伝子浸透が存在することも推測できた.八戸で長期間,有性/無性クローンが存続できたのは,この生息地が常に撹乱(草刈りと洪水)にさらされ,周辺地域からの移住が頻繁に行われたためと考えられる.低温と積雪には有性タイプが有利で,春先のスタートアップは無性生殖が有利であるが,この地域の気候は両タイプの共存を許す条件であると推測された.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2年間にわたって,年2回から3回八戸市の調査地を訪れ,対象となるアブラムシを採集し,実験室で遺伝子型を決定してきた.コロナ禍による影響で,予定したよりも調査実施数が減少したが,その分春と秋に多くのサンプルを得ることができ,遺伝子型決定もほぼ順調に進んでいる.予定していた7遺伝子座について,3月中に遺伝子型決定を終える予定であったが,現在1遺伝子座の決定が間に合っておらず,今後この遅れを取り戻すべく,集中的に実験に取り組みたいと考えている.一方,別の材料において,興味深い現象を見出し,こちらの問題にも,今後取り組む予定を立てており,良い結果を期待している.
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Strategy for Future Research Activity |
エンドウヒゲナガアブラムシに関しては,おおよその傾向をつかむことができたため,研究を深めるために本年は集団遺伝学的な解析に取り組む.さらに無性生殖タイプと有性生殖タイプを共存させた時の競争状態を再現するための実験に取り組む予定である.これまで,こうした実験には十分な経験があるので,問題なく進められると考えている.加えて,本年は,別種のアブラムシ(Tetraneura akinire)も実験に加えて,遺伝学的な調査を進める予定である.さらに,これまでの結果を踏まえ,論文を執筆し,複数のジャーナルに投稿したいと考えている.
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Causes of Carryover |
コロナ禍の状況で,北海道から本州への採集旅行が限定されたことと,研究成果の発表の場としての国際学会・国内学会が相次いで延期となったことが大きい.また研究の途中で,同一の研究テーマであるが,研究に有力な研究材料が新たに見出されたことから,今後こちらの材料にも予算を配分したいと考え,大きな予算が残される結果となった.今後新たな材料を用いた遺伝子実験を大規模に展開する予定であり,また成果をopen access誌等に発表する予定で,掲載料が必要となることから予算は問題なく消化できると予想している
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