2023 Fiscal Year Annual Research Report
単細胞生物におけるプログラム細胞死の進化に関する数理生態学的研究
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19K06851
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
山内 淳 京都大学, 生態学研究センター, 教授 (40270904)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 数理モデル / 形質の多様性 / コロニー形成モデル / 階層的競争 / 競争と繁殖力のトレードオフ |
Outline of Annual Research Achievements |
単細胞生物におけるプログラム細胞死の進化に関する理論的研究を進めたが、その過程で、考案したモデルの定式が階層的競争を伴うコロニー形成モデルと相同であることに気づいた。コロニー形成モデルは多種の共存を説明するために提案されたモデルであるが、その特性が十分に理解されているとはいえない状況であった。本研究課題を進める上で、コロニー形成モデルの特性の理解が必須であると考え、その理論的解析を進めた。 コロニー形成モデルは、多種共存をもたらす理論として提案されたが、その有効性は十分には認められてこなかった。しかしその特性を調べたところ、いくつかの生物群集の特性とよく一致することが分かり、このことを論文として発表した。一方、植物群集に窒素など栄養を長期間添加し続けると群集構造が大きく変化することが知られているが、そのメカニズムは必ずしも明らかになっていなかった。栄養が各種の次世代生産能力を改善するとした場合、コロニー形成モデルによりその群集構造の変化を説明できることを見出し、論文として発表した。また、生物個体がコロニーを形成するためのサイトと出会う過程に依存して、群集動態が大きく変わることが分かった。もとのモデルでは群集組成が平衡状態に収束するのに対し、サイトに出会う前に個体数に対して強い密度効果が働く場合には、種の頻度が永続的に変動し続ける。その動態特性を数値的に解明し、論文として発表した。さらに、密度効果がない場合と密度効果が極端に働く場合について詳細な解析を進め、平衡状態の解析解を導出しその安定性を解析的に示した。この成果は、現在投稿準備中である。また、コロニー形成モデルは同一なホストを利用する病原体の共存にも適用可能であることに思い至り、ホストの個体群動態を考慮したモデルを構築し、平衡状態を解析的に導きその安定性を解析的に示した。この研究については、現在投稿準備中である。
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