2020 Fiscal Year Research-status Report
Adaptive strategy of post-prime adult male chimpanzees
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19K06867
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Research Institution | Kamakura Women's University |
Principal Investigator |
保坂 和彦 鎌倉女子大学, 児童学部, 教授 (10360215)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | チンパンジー / アルファ雄 / 老齢雄 / 壮年期 / 社会関係 / コンソート / 狩猟・肉食行動 / アカコロブス |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、マハレM集団の成熟雄チンパンジー約10頭を対象に個体追跡による行動観察を行い、壮年期を過ぎて老年期に移行していく雄が加齢に伴う身体的・社会的衰退にどのように適応しているかを縦断的かつ横断的に探ることである。 2年目の現地調査で注目する予定であったのは、1991年生まれの壮年雄2頭、プリムス(アルファ雄)とオリオン(元ベータ雄)の社会的地位の低下と、彼らをめぐる社会関係の変化であった。2019年8~9月の調査において、プリムスの地位が揺らいでいることは判明していたが、その数ヶ月後にアルファ雄の交替があったという情報が入った。しかし、新型コロナウイルス感染症のパンデミックの影響により、2020年3月以降の情報は途絶え、2年目の現地調査を遂行することもできなかった。 国内における2年目の研究活動としては、共同研究者2名と、アルファ雄の交替劇を分析して共著論文にまとめるための情報・意見交換を開始した。プリムスの地位が安定していた2017年以降の約3年間の観察記録を中心に他の雄との優劣をめぐる社会的相互作用を分析して、プリムスが他の雄がいる状況下で発情雌を独占できずにコンソートを選ぶようになっていった状況を客観的に示したい。チンパンジーについては、ときに生命の危険を冒してまで地位を守ろうとするアルファ雄がいることが報告されてきた。今回は、対照的に、社会的地位よりも発情雌へのアクセスを優先したアルファ雄がいることを報告できると考えている。 本研究のテーマと深く関連する狩猟・肉食行動については、1965年から続く長期調査の資料を活かした研究の第二弾としてアカコロブスを対象とする集団狩猟がどのように変化したか、また、なぜそのような変化があったかという問いに基づく基礎的分析を行い、共同研究者と連名の原著論文として成果公表することを目指している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
現地調査が遂行できなかったことに加え、現地に滞在する共同研究者がいない状況となったため、国内における過年度調査の整理・分析・投稿準備の作業のみに従事している。
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Strategy for Future Research Activity |
当初計画では、4年間の研究期間における雄間関係の変容を縦断的に研究する予定であった。特に、代表者の初年度調査が終わってまもなく、アルファ雄がその地位から転落し、雄間関係が複雑な状況に入るという幸運に恵まれたが、新型コロナウイルス感染症の世界的流行により、代表者自身による野外調査のみならず、共同研究者の継続観察もおこなわれず貴重なデータが入手できない事態に陥っている。調査地に近い集落に行動記録をとることができる現地協力者が居住しているため、遠隔指示により2年目以降の調査を再開する計画であったが、これは国際通信・送金のシステム構築が間に合わず延期している状況である。3年目以降は、マハレ山塊国立公園、現地の共同研究者及び研究協力者との連携により代替的な調査活動を再開したい。目下、同じ問題を抱えている国内共同研究者と打開策を協議している。 上記方策が順調に進んだ場合、今年度中には、現地国政府から調査許可を得て、遠隔的な調査活動を始め、最終年度に代表者による野外調査を遂行したいと考えている。状況に応じて、最終年度以降に1年間の期間延長をする可能性も考慮している。
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Causes of Carryover |
現地調査をおこなわなかったため、調査許可取得及び海外旅費に必要な経費を次年度以降に回すこととなった。今年度は、タンザニア政府機関(TAWIRI, COSTECH)と連絡を交わして、調査許可証を取得する計画である。調査許可証の有効期限は1年間であるため、最終年度の現地調査までカバーできる。 研究資料のうち過年度に収集した映像・音声データ(過去に収集した膨大な8ミリ、デジタルビデオカメラによる録画データを含む)の整理・解析も進める必要があり、必要な機器、記憶メディア等の購入費用にも使用する。
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Research Products
(1 results)