2022 Fiscal Year Annual Research Report
ネパール丘陵地農民の身体的状況の季節変動 ー20年後の調査研究ー
Project/Area Number |
19K06879
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Research Institution | Kyushu Sangyo University |
Principal Investigator |
大柿 哲朗 九州産業大学, 学術研究推進機構, 科研費特任研究員 (20101470)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 季節変動 / 体重 / 生活環境・様式 / 労働 / 身体活動量 |
Outline of Annual Research Achievements |
以前にほぼ自給自足的生活を営むネパール丘陵地農民の身体的状況に明らかな季節変化があることを報告した。本研究の目的は、20年後にも季節変動が認められるかどうかを検討することであった。 最終年度は、生活環境や生活様式、農作業や家畜飼育等の20年間の変化などについて聞き取りや記録の確認などの追加調査、2020年3月から1ヶ月毎に測定されたデータ整理・分析を行った。2020年3月の渡航時に測定した対象者について翌年12月までの22ヶ月間に1ヶ月毎の追跡測定を実施して貰ったが、2020年11月と2021年5月は新型コロナ感染症蔓延防止のため、この地域でもロックダウンにより外出が制限され、実際には20ヶ月間の測定で、全20ヶ月の測定データが得られた対象者は、男性236名、女性209名であった。体重は1999年3月に比べ男女ともどの年代も有意に増加し、体格指数(BMI)は日本人と大差がなくなっていた。50歳代の男性群の体重は農繁期(6月から9月)とその終了時(10月)に有意な減少が認められたが、その他の年齢群では有意な減少は農繁期に散見される程度であった。収縮期と拡張期血圧にも有意な変化は散見される程度で、年齢群毎で一貫していなかった。脈拍数にも季節による変化は認められなかった。したがって体重の農繁期に減少、農閑期に増加という季節変動は完全に消滅したとはいえなかったが、その変動幅は20年前より明らかに小さかった。体重の季節変動が消滅したあるいはわずかとなった背景には、小型耕運機の導入をはじめ農繁期の労働量の低減、家畜飼育や炊飯・調理に関わる全般的な労働の軽減、移動や荷物運搬の軽減、など身体活動量の減少にあると考えられた。なお24時間心電図記録に基づく農閑期の心拍数指標は20年前と大差が認められなかったが、労働が激しい農繁期の記録は渡航測定が出来ず、裏づけを得ることは叶わなかった。
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