2019 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
19K06894
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Research Institution | Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
宮坂 信彦 国立研究開発法人理化学研究所, 脳神経科学研究センター, 副チームリーダー (70332335)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 匂い / 神経回路 / 脳 / 行動 / ゼブラフィッシュ / 学習 / 記憶 / モチベーション |
Outline of Annual Research Achievements |
嗅覚系は外界の多種多様な匂い分子を受容し、対象物の認知、情動の誘起、内分泌系の変化、さらには記憶の形成や想起を介して「目的行動への意欲」を生み出す神経システムである。匂いとエサ報酬の連合学習系において、ゼブラフィッシュ腹内側視床では、非連合学習群より連合学習群で多くのc-fos(神経活動マーカー)陽性細胞が検出される。また、トレーニングをしていないゼブラフィッシュを常飼育環境から新奇環境に移した場合も、腹内側視床でc-fos陽性細胞数が増加する。腹内側視床の活性化の生理的意義を理解するために、それぞれの実験群におけるc-fos陽性細胞の分子発現プロフィールを解析した。その結果、連合学習群および新奇環境群に共通して、c-fos陽性細胞は特定の神経ペプチドを発現するグルタミン酸作動性ニューロンの集団であることが明らかとなった。このことは、腹内側視床の活性化が両実験群に共通した脳の状態(例えば、覚醒・興味・注意・予期など)を反映し、匂いによって動機づけされた誘因行動や新奇環境での探索行動など、目的行動への意欲に関わる可能性を示している。 腹内側視床のc-fos陽性ニューロンの機能と神経接続パターンを遺伝子工学的に解析するために、発現する神経ペプチドの遺伝子座に酵母の転写因子Gal4を挿入したトランスジェニック系統の作製に着手した。CRISPR/Cas9を介したノックイン法により、間脳領域でGal4を発現する複数のF1個体を得た。内在性神経ペプチド遺伝子の発現パターンを再現するF1個体をスクリーニングし、系統の樹立を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
腹内側視床の特定のニューロン集団が複数の意欲行動に共通して活性化することを見出し、その細胞集団の分子発現プロフィールの解析から、より詳細な解析へ向けての基盤が整った。
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Strategy for Future Research Activity |
CRISPR/Cas9を介したノックイン法により、高効率な遺伝子挿入が可能となった。腹内側視床の特定のニューロン集団を遺伝子操作するトランスジェニック系統や、神経活動履歴を可視化する系統を樹立し、意欲行動を担う神経回路の構造と機能の解析を推進する。
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Causes of Carryover |
予定していたトランスジェニック系統の樹立に時間を要し、系統維持費、神経回路の可視化および機能操作のための費用が一部繰り越しとなった。繰越金および次年度請求分を合わせて、トランスジェニック系統の作製、樹立した系統の維持、神経回路の可視化および機能操作に関する消耗品費、さらには研究成果発表のための旅費に使用する。
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