2021 Fiscal Year Research-status Report
AAV中和抗体を回避する試み:脳内への遺伝子導入を繰り返し可能にする技術の開発
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19K06899
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Research Institution | Gunma University |
Principal Investigator |
今野 歩 群馬大学, 大学院医学系研究科, 講師 (40509048)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
渡邉 康春 富山県薬事総合研究開発センター, その他部局等, 主任研究員 (80646307)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | AAVベクター / ウイルスベクター / 中和抗体 |
Outline of Annual Research Achievements |
2020年度に見いだしたアデノ随伴ウイルス血清型9(AAV9)由来ではない新規血液脳関門透過型アデノ随伴ウイルスベクター(AAV-X)を用いて、実際に繰り返し遺伝子導入が行えることを確かめた。具体的には、GFP(緑色蛍光タンパク質)を発現するAAV-Xベクターを最初に静脈投与し、1週間後に、RFP(赤色蛍光タンパク質)を発現するPHP.eB(AAV9由来の世界で最も使用されている血液脳関門透過型ベクター)を静脈投与した。中和抗体が交差した場合、2回目に投与したPHP.eBは中和抗体に補足され、RFPの発現が観察されないはずだが、GFP、RFPともに脳内での発現が明確に観察された。このことにより、静脈投与による脳への繰り返しの遺伝子導入手法を一部確立した。現在この内容を含む論文を投稿準備中である。 一方、このほかにもPHP.eBと中和抗体が交差しにくい血清型の存在を複数確認しており、これらを元に新規に血液脳関門透過型のAAVベクターの作出を目指すことにした。このため、研究期間を1年間延長し、カプシド改変技術を持つ海外の研究室へ現在留学中である。異なる血清型を元にした血液脳関門透過型ベクターの作出は繰り返し遺伝子導入のみならず、様々な面で神経科学研究を発展させうる技術である。 このほかにも本研究計画とは別に、AAVベクターを用いた関連研究として、Nature Communications、PNASを含む計6報を共著論文として、報告している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究計画を大幅に変更し、新規の血液脳関門透過型AAVベクターを開発することとしたため。特に、新規のカプシドベクターの開発技術を習得するために、当該技術を持つ、海外の研究室へ留学する必要が生じたため。
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Strategy for Future Research Activity |
カプシド改変技術を習得後、PHP.eBと中和抗体が交差しにくい血清型に関して、新規の血液脳関門透過型ベクターを開発する。その後、PHP.eBやAAV-Xとの中和抗体の交差性を検証し、脳内への繰り返し遺伝子導入技術の幅をさらに広げる。
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Causes of Carryover |
新たな技術を習得するために年度をまたいで海外留学する必要が生じたため。次年度使用額は留学先滞在費の他、習得した技術をもとに、新規に実験系を立ち上げるための試薬代等に使用する。
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