2019 Fiscal Year Research-status Report
内側膝状体亜核への選択的遺伝子導入法を用いた聴覚情報処理機構の解明
Project/Area Number |
19K06908
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
宋 文杰 熊本大学, 大学院生命科学研究部(医), 教授 (90216573)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 内側膝状体 / 聴覚皮質 |
Outline of Annual Research Achievements |
私たちは聴覚の研究を進めてきており、聴覚皮質の各領野の機能分担と聴覚視床の各領域の機能分担に興味を持って探索してきた。これらの問題の解決に、領域・領野に特異的に遺伝子を発現できるようにすることが重要である。最近、聴覚視床の内側領域、即ち、内側膝状体の内側核(MGm)に選択的に遺伝子を発現できる系を確立した。本研究では、この系を利用して、1)内側核ニューロンの可視化と、イメージングによる聴覚領野同定を組み合わせ、内側核が結合する聴覚領野を同定する;2)内側核の活動を光遺伝学的に操作し、皮質の聴覚応答に生じる変化を調べ、皮質聴覚応答に対する内側核の寄与を解明する;3)内側核にChR2を導入したスライス標本を用い、内側核ニューロンが直接結合する皮質細胞を同定し、2)の結果の仕組みを解明する、という3つの目標を立てた。本年度では、MGmニューロンの可視化と、光イメージング法による聴覚領野同定を組み合わせ、MGmがすべての聴覚領野に結合することを明らかにし、目標1を達成した。また、目標2)と3)の準備として、MGmニューロンに選択的にhM3Dqを導入することを試みた。導入した動物にアゴニストを投与すると、MGmや聴覚皮質において最初期遺伝子の発現が増強することを観測できた。これらのことから、MGmニューロンの活動はhM3Dqの導入により、選択的に操作でき、MGm活動の増加が皮質の活動増加に繋がることを示唆している。また、新しいアプローチとして、MGmニューロンにカルシウム指示薬を導入し、聴覚皮質においてMGmの軸索終末の活動を観測し、MGmの聴覚応答を明らかにすることを考えた。そのために、生理学研究所の小林憲太博士にAAV2-DIO-GCaMP6s-dTomatoを作成依頼し、現在計測を始めているところである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初立てた3つの目標の一つを達成でき、その他の目標のための準備も部分的にできたため、概ね順調に進展していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
残っている二つの課題、即ち、1)内側膝状体内側核の活動を光遺伝学的に操作し、皮質の聴覚応答に生じる変化を調べ、皮質聴覚応答に対する内側核の寄与を解明する;と2)内側核にChR2を導入したスライス標本を用い、内側核ニューロンが直接結合する皮質細胞を同定し、1)の結果の仕組みを解明する、を解決する。これらの課題を解決するために準備を進めてきており、技術的な問題点を解決してきているため、順調に研究が進むものと期待している。
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