2020 Fiscal Year Research-status Report
内側膝状体亜核への選択的遺伝子導入法を用いた聴覚情報処理機構の解明
Project/Area Number |
19K06908
|
Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
宋 文杰 熊本大学, 大学院生命科学研究部(医), 教授 (90216573)
|
Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
|
Keywords | 聴覚 |
Outline of Annual Research Achievements |
私たちは最近、内側膝状体の内側核に選択的に遺伝子を発現できる系を確立した。前年度において、この系を利用し、内側核ニューロンの可視化と光イメージング法による聴覚領野同定を組み合わせ、内側核が結合する聴覚領野を同定することに成功した。今年度においては、まず内側核がどのような聴覚刺激に応答するのかの問題に取り組んだ。選択的な遺伝子導入で標識した内側核を強拡大で観察したところ、標識されたのはニューロンのサブセットであることが明らかとなった。そのため、通常の電気生理学的な方法では、記録したニューロンは同定できないため、遺伝子導入された内側核ニューロンの活動を同定できない。そこで、生理学研究所の小林憲太博士と共同で、内側核に特異的にGCaMP6sを発現させるウイルスを作成し、聴覚皮質において内側核の軸索終末の活動計測を2光子顕微鏡法で行い、内側核がどのような聴覚刺激に応答するのかを明らかにしようとした。しかし、作成されたウイルスは細胞体では発現が見られたが、軸索の先端では見られなかった。そこで、ファイバーフォトメトリー法を用いて内側核細胞体の活動を計測することにした。現有のレンズとフィルターキューブなどを活用しながら、ファイバーフォトメトリーシステムを立ち上げた。大脳皮質興奮性細胞にGCaMP6sを発現させたマウスを用いたテストを経て、内側核の聴覚応答記録に成功した。今年度に取り組んだもう一つの課題は、内側核の機能に関するものである。限られた予算の中で、行動学習のシステムを立ち上げ、内側核の活動を化学遺伝学的な方法で操作し、それが行動学習において重要な役割を果たしていることを明らかにした。現在、論文発表を準備中である。尚、期間中に聴覚関連英文論文を4編発表した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
内側膝状体に特異的に遺伝子を導入できることを利用し、内側核のニューロンがどのような聴覚刺激に応答し、内側核ニューロンが作る神経回路の機能は何なのか、という二つの根本問題に答えが得られたため、概ね順調に進展していると言える。
|
Strategy for Future Research Activity |
これまで、内側膝状体内側核ニューロンの可視化と応答する聴覚刺激、および内側核ニューロンが作る神経回路の機能を明らかにしたため、今後はその機能を実現するための中間段階、即ち、聴覚野を含めて内側核のどの投射先が重要で、その投射先において内側核のニューロンがどのような影響を与えているのかを明らかにし、全体をまとめて公表する。
|
Research Products
(6 results)