2020 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
19K06918
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
武井 陽介 筑波大学, 医学医療系, 教授 (20272487)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
佐々木 哲也 筑波大学, 医学医療系, 助教 (10634066)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | RORgt / トランスジェニックマウス / IL-17 / ミクログリア |
Outline of Annual Research Achievements |
Th17細胞過剰マウスの解析をすすめた。このマウスはTh17細胞分化のマスターレギュレーターであるRORγtを過剰に発現している。その血清は、IL-17が持続的に高値を示した。Novel Location Recognition Testで空間記憶について検討したところコントロールマウスと有意な差が認められなかったが、組織学的に中枢神経のIba-1陽性ミクログリア数の有意な低下を認めた(Sasaki et al.,Neuropsychopharmacol Rep. 2021)。GFAP陽性のアストログリアの数には著変が見られなかった。一方、Th17細胞の放出するサイトカインは、IL-17以外にも存在するので、IL-17に特異的な中枢神経の異常について検討するために、胎児マウス脳の側脳室にリコンビナントIL-17を微量注入しその効果を観察した。注入は受精後14.5日の胎児に子宮越しに行い、18.5日齢でサンプリングを行った。その結果、マウス脳室周囲のIba-1陽性及びCD68陽性の活性化ミクログリア数がと局在変化を見出した(Sasaki et al.,Mol Brain, 2020)。この変化は、特に大脳の正中近くの脳梁付近で顕著であった。すなわち、Iba-1陽性及びCD68陽性の活性化ミクログリア数が、特に大脳皮質で増加していた。以上の結果から、IL-17によって活性化されたミクログリアが脳梁近傍のニューロンのシナプスや軸索のリモデリングに関与している可能性が考えられ、Th17細胞とTh17細胞の放出するサイトカインIL-17による中枢神経障害の一端を明らかにすることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の目的は、Th17細胞による免疫反応が、ニューロンとグリアにどのような変化を及ぼすのかを解明し、精神神経疾患の病的プロセスにおけるTh17細胞の意義について洞察を得るとともに、新しい治療法開発の基盤を確立することである。現在までのところ、Th17細胞の免疫反応が脳に及ぼす影響を行動及び脳組織の解析を実行し、ミクログリアを中心とした細胞レベルの異常を見出し論文として発表している(Sasaki et al.,Neuropsychopharmacol Rep. 2021)。更に、母体免疫活性化」におけるTh17細胞の役割について洞察を得るためにIL-17の胎児脳脳室への直接注入実験を行い、ミクログリア異常活性化を見出している(Sasaki et al.,Mol Brain, 2020)。以上のように、『研究の目的』・『研究実施計画』に従って研究をすすめ、成果を発表した。
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Strategy for Future Research Activity |
IL-17の中枢神経系の作用について、引き続き①行動、②脳組織、③遺伝子/蛋白発現、、の3項目に注目しつつ明らかにしてゆく。①について、Th17細胞過剰マウス(RORγt過剰発現マウス)の行動学的解析について、現在までのところNovel Location Recognition Testでネガティヴ・データであったが、更に様々な行動科学のテストバッテリーを用い検討する。②について、IL-17受容体の発現について、幼弱な脳組織、成熟した脳組織での発現を明らかにし、比較する。③については、RNAseqのデータ解析を行う。
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Causes of Carryover |
3月に出産予定のマウスを用いて実験を行う予定であったが、マウスの流産のため予定の実験を行うことができなかった。そのため、3月中に購入予定の抗体などの実験消耗品の一部の購入が年度明けに延期されたため、合計12,207円の次年度使用額が発生した。次年度使用額12,207円と今年度の交付額(直接経費)700,000円を合わせた合計712207円の使用計画は以下の通りである。712,207円を以下の内訳の通り消耗品費として使用する。分子生物学試薬(DNA抽出試薬、PCR試薬、合成プライマー、制限酵素類等、合計210,000)、生化学・細胞生物学試薬(蛋白発現解析、抗体等、ニューロン、ミクログリア、細胞核など各種細胞及び細胞成分を区別するための特異的マーカー等,合計418,207円)、SPFマウス購入費(年度あたりC57BL♂10匹×2千円、♀40匹×1.6千円、合計84000円)を購入する。
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Research Products
(18 results)