2021 Fiscal Year Research-status Report
コンドロイチン硫酸分解酵素投与による脊髄損傷ラットの運動機能回復メカニズムの解明
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19K06927
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Research Institution | Yokohama City University |
Principal Investigator |
船越 健悟 横浜市立大学, 医学研究科, 教授 (60291572)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 脊髄損傷 / ペリニューロナルネット / コンドロイチン硫酸 / 運動ニューロン / セロトニン |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の課題は以下の4項目である。①ラット胸髄完全切断モデルにコンドロイチナーゼABC(ChABC) を投与した場合に、脊髄下行路が損傷部を越えて伸長しているかを確認する、②損傷部より尾側(腰髄)の運動領域において、運動ニューロンや介在ニューロンの周囲に形成されるペリニューロナルネット(PNN)について、ChABC 投与後の変化を解析する、③運動ニューロン、介在ニューロンについて、脊髄下行路の軸索終末を定量的に解析し、PNNとの関係を明らかにする、④運動ニューロン、介在ニューロンのそれぞれについて、一次感覚神経の軸索終末を定量的に解析し、PNNとの関係を明らかにする 2021年度は、①の課題に関して、ChABCを投与したラットでは損傷8週目にセロトニン神経線維が損傷部を越えて、腰髄(L5)運動ニューロンにシナプス終末していることを確認した。ChABCの代わりに生理食塩水を投与したラットでは、損傷部を越えるセロトニン神経は認められなかった。この結果は、ChABCの投与がセロトニン神経軸索の再伸長と運動ニューロンへの再支配を促進していることを示唆するものである。②の課題に関して、ChABCを投与したラットでは、生理食塩水を投与したラットよりも、CS-A陽性構造に囲まれている腰髄(L5)運動ニューロンの割合が有意に小さいことを確認した。このことは、ChABCがPNNにおけるCS-GAGの分解に成功したことを示唆している。一方、PNNのマーカーであるWFA陽性構造に囲まれている運動ニューロンの割合は、ChABCを投与したラットと生理食塩水を投与したラットとの間で有意差が認められなかった。ChABCを投与したラットにおいて損傷8週目に認められたセロトニン終末は、WFA陽性構造を伴う運動ニューロンと伴わない運動ニューロンの両方に観察された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2020年度は、COVID-19感染症の拡大による研究活動制限の影響で研究に大幅な遅れが生じたが、2021年度は、2020年度に予定していた実験を行い、運動ニューロンに投射するセロトニン神経線維の再生を確認するなど、大変興味深い知見を得ることができた。この研究成果をもとに、査読付きの国際誌に投稿中である。ただ、2021年度までに遂行できた課題は、本研究課題全体の半分に満たず、進捗状況は「やや遅れている」と判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
2021年度の研究によって、ChABCを投与したラットではセロトニン神経線維が損傷部を越えて、腰髄(L5)運動ニューロンにシナプスを形成していることが明らかとなった。2022年度は、セロトニン性投射路以外に腰髄レベルに投射する脊髄下行路がないのか、ChABCを投与したラットの腰髄に逆行性トレーサーを注入することによって明らかにする。また、④の課題に関して、ChABCを投与したラットと生理食塩水を投与したラットそれぞれについて、運動ニューロンなど運動領域のニューロンへの一次感覚神経の投射をPalvalubuminをマーカーとして調査し、終末を定量的に解析する。これらの研究を通じて、ChABCによる運動機能改善効果が、どのような神経系の再生や代償的な変化によってもたらされているのかを明らかにしたいと考えている。
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Research Products
(2 results)