2020 Fiscal Year Research-status Report
Reexamination of adult neurogenesis in the marmoset and human hippocampus
Project/Area Number |
19K06930
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Research Institution | Tokyo Medical University |
Principal Investigator |
石 龍徳 東京医科大学, 医学部, 主任教授 (20175417)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
柏木 太一 東京医科大学, 医学部, 助教 (10398232)
篠原 広志 東京医科大学, 医学部, 講師 (10455793)
權田 裕子 東京医科大学, 医学部, 助教 (60424181)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 海馬 / 成体脳ニューロン新生 / PSA-NCAM / DCX / マーモセット |
Outline of Annual Research Achievements |
「成体脳ニューロン新生」は現在神経科学の常識となっており、マウスを中心に活発に研究が行われている。しかし、最近になってヒトの海馬のニューロン新生レベルは、成人ではほとんど検出されないレベルであるとの論文が出され、ヒトの成体脳ニューロン新生についての議論が現在まで続いている。我々は、この点について、成人の海馬では細胞分裂によって新生するニューロン数は非常に少ないが、未熟ニューロンマーカー分子を発現しているニューロン数はマウスと比較してそれほど少なくないという結果を得た。また、未熟ニューロンマーカーを発現する細胞の分布が、齧歯類とヒトでは異なることを見出した。この結果から、我々は、齧歯類とヒトでは、未熟ニューロンの存在様式が異なるのではないかと推測した。本研究では、この問題の解決を目指して、マーモセットの未熟ニューロンマーカー発現細胞を解析し、これまでに得られたヒトのデータと比較している。マーモセットの海馬における未熟ニューロンマーカー(PSA-NCAM, DCX)発現を調べたところ、顆粒細胞層内側と歯状回門に分布が見られた。この分布パターンはヒトと類似しているが、歯状回門に未熟ニューロンマーカーが見られない齧歯類とは異なる。この領域に見られる未熟ニューロンマーカー発現細胞のうち、どの細胞が顆粒細胞であるのかを調べるために、顆粒細胞マーカーのProx1を使って解析したところ、未熟顆粒細胞は顆粒細胞層直下にある程度の幅を持って帯状に存在していた。この帯は、齧歯類の場合よりもやや幅が広く、ヒトの推定上の顆粒細胞層下帯の領域と似ているように見えた。以上から、マーモセットはヒトの未熟ニューロンマーカー発現細胞のモデルとして適切であると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
ヒトの手術摘出海馬の入手が難しく、マーモセットの海馬のみの解析となった。免疫染色法において、今まで齧歯類で問題なく使用できた抗体が、マーモセットではしばしば染色がうまくいかない場合があり、染色法の検討に時間がかかった。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は歯状回門に存在する未熟ニューロンマーカー発現細胞の性質をさらに調べる予定である。一つは、マーモセットにBrdUが投与されているので、BrdU標識細胞を検出することによって歯状回門の未熟ニューロンマーカー発現細胞に新生細胞が含まれているかどうかを調べる。つぎに、未熟ニューロンマーカー発現細胞のニューロンタイプを調べる目的で、齧歯類で知られている歯状回門の細胞マーカー分子(エンケファリン、ソマトスタチンなど)の発現を調べる。また電子顕微鏡により、未熟ニューロンマーカー発現細胞のシナプスの状態を調べ、成熟細胞と比較する。
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Causes of Carryover |
東京医科大学の疾患モデル研究センターで、マーモセットを飼育する予定であったが、疾患モデルセンターでの大型動物飼育を廃止することが決定されたので、マーモセットの飼育ケージやマーモセットの購入を中止した。そのために、使用計画の変更を余儀なくされた。現在は、マーモセットの脳組織を他大学から入手している。当該年度は、コロナ禍で、十分な実験時間が確保できなかったり、学会がネット開催になり、出張費の交通費がゼロだったりしたために予算と決算に差が生じた。また、コンピュータの購入を計画したが、教室内のコンピュータで解析が十分であることが判明し、コンピュータの購入を中止した。翌年度分として請求した助成金と合わせた研究費は、1) 数種類の新しい抗体を購入する、2) 古くなった実験器具(ピペットマンなど)の買い替え、3) Fib-SEMなどの特殊な電子顕微鏡の使用料金などに使用する計画である。
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Research Products
(9 results)