2021 Fiscal Year Annual Research Report
運動ニューロンの多様性から探るALS脆弱性・耐性の分子生理学的基盤
Project/Area Number |
19K06933
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Research Institution | National Institute of Genetics |
Principal Investigator |
浅川 和秀 国立遺伝学研究所, 遺伝形質研究系, 客員研究員 (30515664)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | ALS / TDP-43 / 神経変性 / ATP / ミトコンドリア / 細胞サイズ |
Outline of Annual Research Achievements |
筋萎縮性側索硬化症(ALS)は、筋肉に接続する神経細胞「運動ニューロン」が特異的に変性する神経変性疾患である。本研究は、ALSにおいて変性しやすいとされる運動ニューロンのタイプほど、オートファジー流動が亢進している、という熱帯魚ゼブラフィッシュにおける観察を出発点として、オートファジー流動とニューロンのALS脆弱性の関係性を理解することを目指した。令和3年度は、細胞サイズが大きい運動ニューロンほど脆弱である、というALSの特徴に着目し、運動ニューロンの細胞サイズとオートファジー流動の関係性を探った。 令和2年度において構築した細胞内ATPの増減をイメージングする為のトランスジェニックフィッシュを用いて、脊髄運動ニューロンの細胞サイズと細胞内ATPレベルの関係性を検証した。その結果、細胞サイズが大きい脊髄運動ニューロンほど、相対的に細胞内ATPレベルが低下していることを見出した。また、ALSの運動ニューロンに異常な凝集体を形成するRNA/DNA結合タンパク質TDP-43を、遺伝子破壊によって枯渇させたり、あるいは、過剰発現させると、脊髄運動ニューロンの細胞内ATPのレベルが著しく低下した。この結果より、細胞内ATPレベルの低下は、主要なALS病態であることが示唆された。 以上より、健康な状態においても細胞内ATP量が相対的に低下していることが、大きい運動ニューロンのALS脆弱性を高めており、細胞内ATPを補うためにオートファジー流動を亢進させている、という仮説を立てるに至った。大きい運動ニューロンにおいて亢進しているオートファジー流動は、細胞の主要なATPの供給源であるミトコンドリアの品質管理の活発さを反映している可能性を、今後検証する必要がある。
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Research Products
(11 results)