2021 Fiscal Year Research-status Report
Functional localization and corticofugal projections of premotor areas controlling posture and reaching
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19K06934
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Research Institution | University of Toyama |
Principal Investigator |
中島 敏 富山大学, 学術研究部医学系, 准教授 (00455792)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 姿勢調節 / 到達運動 / 随意運動 / 高次運動野 |
Outline of Annual Research Achievements |
ヒトや四足動物は肢による到達運動に先立ち,標的の位置や用いる肢に合わせて異なった予期的姿勢調節をすることが知られています.2021年は旭川医科大学との共同研究でネコを訓練し,床反力計の上に直立した状態からどちらかの前脚を挙上し,ネコの前方,頭部とほぼ同じ高さに設置されたチューブの先に到達運動を行った上でそこから固形試料を掻き出すという一連の動作を行わせました.私達は餌の入ったチューブの位置を前後左右に変えながら実験を行い,(1)チューブの位置変化に応じ,片方の前脚が床面から離れる直前のネコの重心の位置が変化すること,(2)チューブ先端をネコの前脚から20cm程度の距離に置いたときには,前脚を挙上する直前から実際にチューブ先端に前脚が到達するまでの間に重心の移動がほとんど起こらないことを発見しました.これらの発見は,到達した場所で巧緻動作(この場合餌を掻き出す動作)を行う場合には,到達運動後に姿勢を安定させ,かつ巧緻動作を行う脚で体重の保持を行わなくて良いように,到達運動の開始前に予め最適な位置に重心を移動し,それ以降ほとんど重心を移動することなく一連の動作を遂行できるような行動戦略をネコがとっていることを示唆します(2022年1月に査読付きのシステム神経科学の専門誌に掲載). また,ネコが自身の行動履歴に基づいて標的の出現場所を予測し,この予測を姿勢調節に反映していることを検証するため,3試行ごとに標的の位置が交代する遅延到達運動課題を2頭のネコに課して実験を行いました.その結果,一匹のネコは標的位置の変化を予測した姿勢調節を行っており,もう一匹のネコは変化を予測した戦略をとっていないことが示されました(2021年7月の日本神経科学大会にてポスター発表).
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
当初の計画で行う予定であったネコの重心位置の解析は順調に進んだが,国内における移動制限のため,ネコを用いた侵襲的脳活動記録(旭川医科大学で行う予定であった)を実施できなかった.代替としてニホンザルに到達運動課題を行わせられるような実験系の構築を富山大学で開始したが,2021年9月より2022年4月までの予定で補助事業者の所属する講座のある区画で全面的な改修工事が行われ,かつ補助事業者自身が国際共同研究A(19KK0414:高次運動野の領域特異的な歩行制御機構の解明)に関連した実験遂行のため2021年10月よりカナダに渡航し,2022年度途中までカナダに滞在予定となったため,2021年9月以降に実験系の構築を継続しニホンザルを訓練することが不可能となった.
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Strategy for Future Research Activity |
ネコを用いた実験系に関し,(1)申請者が既に旭川医科大学で行った実験については学会で発表済みであり,本年度中に論文として発表することを目標とする.(2)サルを用いた実験系の構築を富山大学にて継続するため補助事業期間の延長申請を行ったが,2022年度中にデータ取得,解析を全て完了するのは極めて困難であるため,(3)並行して旭川医科大学との共同研究でネコの後頭頂葉,高次運動野,一次運動野にムシモールを微量注入して不活性化した時の到達運動の変化を解析し,それぞれの脳領域の不活性化によって生じた姿勢及び随意運動の調節の障害を特徴づける.
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Causes of Carryover |
2021年度も国内及び国外への移動制限のために,日本神経科学大会・北米神経科学学会への出張旅費として計上していた額をほとんど使用しなかった.残額はサルを用いた実験系の構築,(移動制限が解除された場合の)学会出張旅費,論文の英文校正費用,論文出版費に充当する.
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