2020 Fiscal Year Research-status Report
スパイン形成の新規制御因子LMTK1の分子機能と疾患に関連した研究
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19K06942
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Research Institution | Tokyo Metropolitan University |
Principal Investigator |
久永 眞市 東京都立大学, 理学研究科, 客員教授 (20181092)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
飯島 香奈絵 (安藤香奈絵) 東京都立大学, 理学研究科, 准教授 (40632500)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 神経細胞 / LMTK1 / スパイン / 小胞輸送 / リン酸化 / エンドソーム / 高次脳機能 |
Outline of Annual Research Achievements |
神経細胞は軸索および樹状突起という2種の長い突起を介して神経回路を形成し、記憶、学習、認知など高次脳機能を可能にしている。軸索や樹状突起の末端には、他の神経細胞との情報交換に機能する膜タンパク質などが配置されている。それらは主に神経細胞体で生合成され、小胞輸送によって突起内を機能する場所へと運ばれていく。正常な神経活動を維持するためには、シグナル分子などを遠方の正しい場所へ、必要な量だけ輸送することが必要である。それにはエンドソームなどの小胞輸送が関わっている。小胞の輸送は低分子量GTPaseであるRabによって制御されている。これまでのRabの研究は主に極性のない株化培養細胞で行われており、神経細胞のような極性があり、しかも、輸送距離が長い細胞についての知見は少ない。特に、それぞれのRabがどのように制御されているかは、殆ど判っていない。我々はRab11というリサイクリングエンドソームの輸送を制御する因子LMTK1を見つけ研究を行なっている。最近、LMTK1は神経細胞の軸索、樹状突起、スパインの形成、維持に必要であり、脳の高次機能制御にも関わっていることが示唆された。本研究は、LMTK1の活性制御、神経機能、および、脳機能における役割を明らかにする目的で行っている。本年度では、LMTK1の脳内における機能をLMTK1のノックアウトマウスを用いて、主に社会行動などへの影響を解析をした。その結果、LMTK1 KOマウスは行動が活発化し、ふやんよう行動が低下することを見つけた。また、LMTK1が輸送するエンドソームで運ばれるタンパク質であるBACE1についても解析をした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
LMTK1の脳内における機能をLMTK1 KOマウスを用いて解析をした。神経細胞ではシナプスの数が脳の海馬などで多くなっていたため、昨年は記憶、学習などへの影響を調べ、記憶維持において、野生型に比べるとわずかに低下していることを示した。本年度はその他の行動解析を行い、論文としてまとめ発表を行った。オープンフィールドでは運動量の増加が見られた。特に壁などにたいするアタックの回数が増加していた。中央への侵入回数が減少していたので、不安感情が増加している可能性を考え、高架式十字迷路実験を行ったが、逆にオープンアームへの侵入が増えており、中央への侵入回数減少は壁際での行動時間の増加による二次的なものと考えられた。ロータロッドテストでは、トレーニングする前から、野生型マウスよりも落下するまでの時間が長く、運動能力の上昇が見られた。強制水泳テストや尾懸垂テストでは静止している時間が短くなり、うつ様行動も低下していることが示された。一方、ソーシャル・インタラクションテストや新奇性テストでは野生型と差が見られなかった。以上のことを総合して考えるとLMTK1遺伝子の欠損は注意欠陥多動性障害に似た行動異常を示す様になることが初めて明らかとなった。 LMTK1は分子、細胞レベルでは回収エンドソームの輸送をRab11丁分子量Gタンパク質を介して制御していることがすでにわかっている。Rab11の異常はアルツハイマー病などの神経変性疾患のリスク因子であることが報告されている。アルツハイマー病のアミロイドβはその前駆体タンパク質(APP)の分解によるが、その分解はエンドσ―ムで起こるとされている。アミロイドβ産生に関わるBACE1の輸送を調べたところ、LMTK1の関わりが示され、解析を進めた。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度は新型コロナ流行に伴う大学の閉鎖や大学院生への研究活動の制限により、研究予定が遅れた。そのような状況にも関わらず、LMTK1 KOマウスを用いた脳内のLMTK1の機能解析は論文発表まで行うことができた。いくつかの行動実験装置のセットアップに加え、論文投稿後のリバイス実験では、担当する大学院生が休日や祭日などに、蜜をさけるようにして実験を行い、レビュアーに要求された実験を行うことができた。その論文の発表によって、マウス個体を用いた精神疾患との関連研究は終了することとした。今後は発達障害との関連について調べたいと考えている。 一方、今年度はLMTK1によるBACE1輸送制御の研究を並行して進めた。来年度に向けては、神経変性疾患との関連により研究の中心をシフトする予定である。アルツハイマー病の発症にはアミロイドβの生成が関わっている。アミロイドβはアミロイド前駆体タンパク質(APP)がβセクレターゼであるBACE1とγセクレターゼであるプレセニリン複合体により、順に切断されることによって起こる。この切断はエンドソームで起こることが示唆されているが、なぜアルツハイマー病でアミロイドβが増加するかは不明である。すでにLMTK1がBACE1の輸送を制御していることを見つけている。今後はLMTK1によるBACE1輸送制御がアルツハイマー病発症とどのような関わりがあるかを細胞モデルを用いて解析を行う予定である。
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Causes of Carryover |
新型コロナ流行による緊急事態宣言で、研究室に来ることが制限され、研究が予想していたよりもで出来なかったことによる。
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[Presentation] Disease-dependent phosphorylation of tau in tauopathies2020
Author(s)
Samimi, N., Sharma, G., Kimura, T., Huo, A., Chiba, K., Murayama, S., Akatsu, H., Hashizume, Y., Hasegawa, M., Farjam, M., Shahpasand, K., Ando, K., Hisanaga, S.
Organizer
第63回日本神経化学会年会
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[Presentation] Hyperactive and impulsive behaviors of LMTK1 knockout mice2020
Author(s)
Takahashi, M., Takahashi, R., Sugiyama, A., Kobayashi, S., Fukuda, K., Nishino, H., Wei, R., Kita, I., Ando, K., Manabe, T., Kamiguchi, H., Tomomura, M., Hisanaga, S.
Organizer
第63回日本神経化学会年会
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