2019 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
19K06953
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Research Institution | University of Toyama |
Principal Investigator |
西丸 広史 富山大学, 学術研究部医学系, 准教授 (20302408)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 情動 / 運動 / 皮質下神経回路 / 前頭前野 |
Outline of Annual Research Achievements |
動物は感覚刺激によって生じる情動をもとに次の行動を選択する。この情動を司る神経回路について多くの研究が行われているが、生じた情動をもとに適切な運動を発現させる神経メカニズムの大部分は現時点でも明らかになっていない。本研究では、哺乳類の大脳皮質下の情動関連領域において、感覚刺激によって生じた情動をボトムアップに 運動出力に変換する神経メカニズムを明らかにすることを目的とする。これにより新たな角度から哺乳動物の行動原理の一端に光を当てることを目指す。特に、視覚刺激をもとに、異なる運動を選択する 行動課題を学習させたマウスにおいて脳の情動および運動関連領域のニューロン群の活動を測定・操作し、どのように情動から運動信号へと変換しているのかを明らかにする。今年度は、皮質下の運動および情動回路と多くの神経結合があり、いわば情動と運動のハブに位置する前頭前野の前帯状皮質で、この過程がどのように表現されているのかを調べた。頭部を固定したマウスにトレッドミルの上を歩行する報酬獲得行動課題を行わせ、前帯状皮質において多数のニューロン群の活動を同時に測定し、解析を行った。この結果、前帯状皮質において、歩行運動の開始と終了に関連した活動を示すニューロンおよび報酬予測に関連したニューロンが多く記録された。また主成分分析を用いた解析により、前帯状皮質のニューロン集団が歩行運動の開始と終了さらには報酬の情報を符号化していることを見出した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度、運動と神経活動の記録と課題制御を行うことができる実験装置と、基本的な行動課題パラダイムを確立し、課題遂行中のマウスの脳活動の記録(多数のニューロンからの同時記録)と解析を行った。これにより、情動に関連した運動の際に、皮質下の神経回路からの情報を受けてこれらを制御する脳部位の活動を成果を学会で発表した。これは次年度以降の、他の領域での記録および神経活動操作の重要な礎となる。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度の成果として前帯状皮質が重要な役割を担っていることが明らかになったため今後は、前帯状皮質に入力する皮質下部位および入力を受ける皮質下および皮質領域のニューロン群の記録を行う。また、これらの部位のニューロンの活動を光遺伝学的手法および化学遺伝学的手法を用いて人為的に操作し、ニューロン活動と行動の因果関係を明らかにすることを目指す。長時間活動を制御するために当初の計画にはなかった化学遺伝学的手法を合わせて用いる。
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Causes of Carryover |
今年度は、効率的に実験を行うことができたこと、参加を予定していた学会、研究会および研究打ち合わせが新型コロナウイルス感染拡大の影響で中止もしくは学会誌上開催になったことなどにより、旅費などが当初の予定を下回った。このため、次年度使用額が生じた。次年度、当初の計画に加えて行う予定の、化学遺伝学的手法を用いる実験に必要な試薬などの消耗品や実験動物を購入するために使用する予定である。
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