2021 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
19K06953
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Research Institution | University of Toyama |
Principal Investigator |
西丸 広史 富山大学, 学術研究部医学系, 准教授 (20302408)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 情動行動 / 歩行運動 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、哺乳類の中枢神経系の情動関連領域において、感覚刺激によって生じた情動をボトムアップに 運動出力に変換する神経メカニズムを明らかにすることを目的とした。そこで視覚刺激をもとに、報酬を得るために歩行運動を行う行動課題を学習させたマウスにおいて脳の情動および運動関連領域のニューロン群の活動を測定・操作し、情動をコードした神経活動が運動の発現にどのように関与しているのかを調べるアプローチをとった。哺乳類の前帯状皮質は、情動に関する情報と上記の運動関連領域からの信号を統合しているハブとしての役割を担っていると想定されている。しかしこの部位のニューロンが、運動とその結果を状況の変化に応じてどのように符号化しているのかは不明であった。そこで自発的に歩行運動を開始することが求められる報酬課題中のマウスの前帯状皮質ニューロンの活動を記録し解析した。その結果、前帯状皮質で記録されたニューロンのうち、40%以上のニューロンが行動課題の重要なイベントである運動開始とその終了、および報酬に関連する情報を符号化していた。このうち、報酬獲得の前後に有意に活動が変化したニューロン、マウスが歩行を開始したときに発火頻度が有意に上昇したニューロン、そして歩行を開始したときに発火頻度が有意に低下したニューロンが含まれていた。これらの結果は、前帯状皮質には行動課題の運動と情動の要素をコード化するニューロンが多く存在することを示している。さらに、上記の歩行運動に関連した活動を示すニューロンのうち約30%が、試行の結果(報酬を受け取ったかどうか)でその活動が有意に異なっていた。この結果は、運動に関連した前帯状皮質の活動が報酬の獲得の有無と関連している可能性を示唆していた。以上の結果より、前帯状皮質において、感覚刺激によって生じた情動が運動出力の信号に影響を及ぼしていることが示唆された。
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