2020 Fiscal Year Research-status Report
高脂肪食摂取による肥満と脳の炎症~マクロファージに着目して~
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19K06958
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Research Institution | Nara Medical University |
Principal Investigator |
竹村 晶子 奈良県立医科大学, 医学部, 助教 (70647049)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
石西 綾美 奈良県立医科大学, 医学部, 研究員 (10836018) [Withdrawn]
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | マクロファージ / 炎症 / 幼少期隔離 / タニサイト |
Outline of Annual Research Achievements |
研究代表者は、高脂肪食を与えた動物の摂食調節に関連する弓状核や室傍核などの脳視床下部に、通常食では全く認められない末梢由来のマクロファージが肥満に先行して集積することを見出した。この結果は、高脂肪食摂取により脳の摂食に関連する部位においてマクロファージが炎症を惹起していることを示唆し、この炎症による摂食調節にかかわる神経組織の損傷が、結果として肥満をもたらしているのではないかと考えた。しかし同様の研究結果が他のグループから報告された。そのため我々は、この研究の過程で摂餌量計測のため幼少期から1ケージあたり1匹で隔離飼育したマウスで、視床下部正中隆起のタニサイト形状に異常が認められたことに着目した。正中隆起は摂食調節において血中のホルモンが脳に作用するためのホルモンの通り道であるだけでなく、主要なストレス応答システムであるHPA軸において、脳で産生した副腎皮質刺激ホルモン放出ホルモンを血中へ分泌する部位である。隔離飼育したマウスでは、ストレス負荷後の正中隆起の副腎皮質刺激ホルモン放出ホルモン残量がグループ飼育群と比較して有意に多かった。つまり、隔離飼育マウスではタニサイトがCRFの分泌を阻害することでストレス応答時のHPA-axis activityが減弱している可能性があることが示唆された。また、脳由来神経栄養因子の受容体であるTrkBは視床下部に発現し高脂肪食摂取による肥満に関与するが、このTrkBの発現を調節しうるタンパクとしてsorting nexin 25を同定し1本の論文として報告した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
申請当初の計画通り研究を進めていたが、同様の結果を他のグループが先行して報告された。そのため、現在は隔離飼育マウスの解析にターゲットを絞って研究を進めている。隔離ストレスによるHPA軸の乱れについてはいくつか先行研究があるが、正中隆起に着目したのは本研究が初めてである。高脂肪食研究をしていたので偶然正中隆起のグリア細胞の形態異常に気づいた。このグリア細胞の形態異常とストレス負荷時の副腎皮質刺激ホルモン放出ホルモン分泌異常についての1本の論文として投稿準備中である。一方で、sorting nexin 25によるTrkBの発現調節に関する報告をした点で一定の成果は得られた。
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Strategy for Future Research Activity |
来年度は隔離飼育マウスに関する研究を学会のシンポジウムなどで積極的に発表し、フィードバックを受けて研究内容をブラッシュアップし、論文受理を目指す。
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Research Products
(5 results)