2019 Fiscal Year Research-status Report
The neurobiological mechanisms of coping strategies avoinding generalization of fear associations in PTSD
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19K06959
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Research Institution | Ohu University |
Principal Investigator |
関 健二郎 奥羽大学, 薬学部, 准教授 (50342803)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
松木 亨 愛知県医療療育総合センター発達障害研究所, 細胞病態研究部, 主任研究員 (90332329)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 心的外傷後ストレス障害(PTSD) / 積極的コーピング / コルチコトロピン放出ホルモン |
Outline of Annual Research Achievements |
心的外傷後ストレス障害(PTSD)では、無関係な状況でもトラウマ記憶が想起され(トラウマ汎化)、恐怖・戦慄・回避による精神的苦痛を受ける。トトラウマ汎化の形成には、1)恐怖体験の数時間後に類似した状況に遭遇すると、恐怖体験した状況とその後に類似した状況の違いに対する記憶が不明瞭になり、恐怖体験した場所以外でも恐怖再体験が誘導されるという仮説が提唱されている。初年度は、PTSDモデルマウスの作成を試みた。マウスを箱Aに入れ、床グリッドから電気ショックを与え、箱A内環境=恐怖の文脈的記憶形成を誘導した。その3時間後に箱Aに類似した箱Bに入れ、24時間後に再度箱Bに入れるとすくみ行動(フリージング)時間が顕著に増加した(ABBマウス)。一方、箱Aで電気ショックを与え、24時間後に箱Bに入れたマウス(A--Bマウス)では顕著なフリージングが生じなかった。これは、ABBマウスでトラウマ汎化が誘導されていることを示唆する。また24時間後の箱Bにおけるフリージング時間が、3時間後の箱B内の中央エリアの滞在時間や移動距離と有意に逆相関することを見出した。PTSD発症の阻止には、レジリエンス概念(ストレスを跳ね除ける力)として積極的コーピング(ストレスへの積極的対処)の役割が注目されている。我々は、コルチコトロピン放出因子2型受容体が恐怖刺激に対する積極的コーピングの誘導に関与する可能性を見出している。そこでCRH発現を阻害するために、CRHのshRNAをアデノ随伴ウイルス(AAV; pAAV-PHP.eB)ベクターに挿入したAAVを作成して視床下部に投与した。その結果、3時間後の箱B内の中央エリアの滞在時間や移動距離が顕著に減少し、24時間後の箱Bにおけるフリージング時間が顕著に延長することを予備実験で確認した。これは、視床下部のCRHがトラウマ記憶の汎化を制御する可能性を示唆する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
マウスを用い、実験室の明るさやマウスの条件など、トラウマ記憶の汎化を誘導する条件を確立することに長期間を要したが、ICRマウスはフリージングの誘導に適さないこと、これに対し8~12週齢の雄性C57BL6系マウスであれば箱Aで恐怖条件付けして、その3時間後に箱Bに入れることで、24時間後の箱Bでマウス(ABBマウス)のフリージング時間が顕著に延長することを、箱Aで恐怖条件付けを行い、24時間後に箱Bに入れたマウス(A--Bマウス)と比較することで確認した。さらに、どの条件下におけるマウスの行動様式がレジリエンスを意味する積極的コーピングに相当するのかを明らかにするために、電気ショックを与えた箱A内の行動様式や3時間後の箱Bおよび24時間後の箱Bの行動様式を可能な限り解析し、ABBマウスにおける24時間後の箱Bにおけるフリージング時間が3時間後の箱Bの中央エリアの滞在時間や移動距離と逆相関することを15匹以上のマウスで確認することができた。また、箱Aで恐怖条件付けを行い、3時間後に箱Bに入れ、24時間後に再度箱Aに入れてフリージングを誘導したマウス(ABAマウス)では24時間後の箱Aにおけるフリージング時間と3時間後の箱B内における行動様式と逆相関しないことを確認し、トラウマ記憶の汎化が生じる条件だけの時だけ逆相関することを確認した。さらにまだ予備結果ではあるが、CRHの発現を阻害するためのアデノ随伴ウイルスを作成し、そのウイルスをマウスの視床下部に投与して、GFPを発現する細胞でCRHの発現が阻害されていること、またそのマウスではトラウマ汎化が増強することを確認した。このため、初年度の本研究は概ね順調に進行していると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
2年目は、初年度に作成したCRHの発現を阻害するアデノ随伴ウイルス(AAV-CRH-shRNA)に加え、CRHを過剰発現するAAV、コントロールAAVをそれぞれ作成し、これらをそれぞれマウスの視床下部や扁桃体、分界条床核などに投与し、どのCRHが3時間後の箱Bにおける積極的コーピングを制御しているかを調べ予定でいる。また、トラウマ記憶の汎化が成立したマウスで尾懸垂テスト(TST)を課し、TST中の不動時間を測定することで、抑うつ症状の一つである学習性無力感形成促進が認められるか否かを確認し、どのウイルスをどの領域に投与したマウスで学習性無力感形成との相関が得られるかを調べる予定でいる。
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Causes of Carryover |
マウス資料引数が予定よりも少なく実験したことと3月の学会での成果発表と共同研究者との打ち合わせを予定していたが、新型コロナウイルスの影響で中止になり、その分の旅費を使わなかったたため。
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