2020 Fiscal Year Research-status Report
広範囲伝播脱分極波による胎児脳発生の制御と喫煙による脳障害発生メカニズムの解明
Project/Area Number |
19K06962
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Research Institution | Kanto Gakuin University |
Principal Investigator |
佐藤 容子 関東学院大学, 栄養学部, 教授 (70251501)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | ニコチン / 胎生期 / 脱分極波 / 神経系 / 発生 |
Outline of Annual Research Achievements |
妊娠中の喫煙・受動喫煙は、胎児の脳に様々な悪影響を及ぼすことが知られている。本研究は、胎生期に一時的に発現する広範囲伝播脱分極波がニコチン型アセチルコリン受容体に依存することに着目し、「喫煙にともなう母体のニコチン摂取が脱分極波に影響を及ぼし、それによって神経回路網の正常な形成過程が阻害され、胎児脳機能障害が生じるのではないか」という仮説を検証することを目的として計画された。 令和2年度は、in ovo鶏胚へのニコチン投与による神経系発生への影響を解析した。令和元年度の解析結果を基にnicotineの投与量を算定し、脱分極波に伴って生じる鶏胚のembryonic motilityを指標にして、最終的な投与量を、nicotine 5mM液100 μL/日とした。孵卵4~7日の卵殻に穴を開け、一日一回nicotine液を投与した後、卵殻の穴をテープで密封し、孵卵を継続した。孵卵8日目(機能的シナプス形成期)に鶏胚を取り出し、迷走神経感覚核におけるシナプス回路網形成への影響について解析した。一次感覚核である孤束核において、迷走神経刺激によって誘発されるシナプス後電位を光学的に測定し、その大きさと空間的な広がりについて比較したところ、コントロール標本とnicotineをin ovo投与した標本との間に、明らかな違いは見られなかった。一方、孤束核からの二次投射を受ける傍腕核において同様の測定を行ったところ、傍腕核におけるシナプス後電位の応答は、nicotineをin ovo投与した標本で著明に減弱することがわかった。これらの結果から、in ovo鶏胚のnicotineへの暴露は、脳幹内におけるシナプス回路網の機能的発生、特に高次感覚核におけるシナプス伝達機能の発生を阻害することが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
令和2年度中に論文発表まで行うことができた。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は、哺乳類胎仔における解析をすすめる。
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Causes of Carryover |
(理由)コロナウイルスの影響で学会参加費が削減されたため、次年度に使用することとした。 (使用計画)次年度の物品購入費に充てる。
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