2022 Fiscal Year Annual Research Report
広範囲伝播脱分極波による胎児脳発生の制御と喫煙による脳障害発生メカニズムの解明
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19K06962
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Research Institution | Kanto Gakuin University |
Principal Investigator |
佐藤 容子 関東学院大学, 栄養学部, 教授 (70251501)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | ニコチン / 胎生期 / 脱分極波 / 神経系 / 発生 |
Outline of Annual Research Achievements |
令和4年度は、令和3年度に行った哺乳類胚in vitro標本での解析結果を踏まえ、in situにおける解析を行った。令和2年度に行ったin ovo鶏胚の実験において、迷走神経回路網の傍腕核におけるシナプス後電位が、nicotineをin ovo投与した標本で著明に減弱することが明らかにされており、この神経核をターゲットにして、哺乳類でも同様の異常がみられるかどうかを検証した。マウスを対象とし、母体へのニコチン投与法については、Paulyらによって開発された経口投与法に準じた。妊娠3日目-実験日(妊娠14日目)まで、母体に0.2% nicotineを含む2% saccharin水の経口投与を行ったところ、胎児死亡・胎児発育不全を引きおこしたため、0.01% nicotine含有2% saccharin水に変更して実験を行った。この条件下で、胎仔が外見上正常に発育したので、妊娠14日目に胎仔を摘出し、en blocの脳幹-迷走神経標本を作成した。これまでに、6例のコントロールマウス(水道水投与)、7例の2% saccharin水投与マウス、11例の0.01% nicotine含有2% saccharin水投与マウスについて、迷走神経刺激に対する傍腕核応答の光学的計測を行ったが、シナプス後電位が消失するような劇的な影響は見られず、今後、統計解析を行うための症例数の増加や、nicotine投与濃度の再検討などを行う予定である。 本研究の成果により、妊娠中の喫煙がおよぼす胎児神経系への影響について、胎生期におけるニコチンへの暴露が脱分極波を抑制し、それに伴って脳幹内シナプス回路網の機能的発生が阻害されるという、新たな病態メカニズムが提唱されるに至った。哺乳類胚を含めての種を超えた普遍性については、今後のさらなる検証が必要と思われる。
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Research Products
(2 results)