2020 Fiscal Year Research-status Report
複合ブレンステッド塩基が拓く炭素-水素結合の直截的カルボキシル化反応
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19K06967
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
重野 真徳 東北大学, 薬学研究科, 准教授 (30571921)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | ブレンステッド塩基 / カルボキシル化 / 炭素-水素結合 |
Outline of Annual Research Achievements |
当該年度は、1,3,5-トリブロモベンゼンを反応基質として用い、1気圧の二酸化炭素雰囲気下、芳香族炭素(sp2)-水素結合のカルボキシル化反応の開発に取り組んだ。具体的には、複合ブレンステッド塩基として、各種アルコキシド塩基、アルカリ金属塩、配位子の組み合わせを検討したところ、LiO-t-Bu、CsF、18-クラウン-6-エーテルを用いた際に、目的の安息香酸誘導体が収率良く得られることを見出した。今回、高い反応性が得られた理由としては、安定なフッ化リチウムの生成を駆動力として、塩基性が高いセシウムアルコキシドが反応系内で形成したためと捉えている。加えて、18-クラウン-6-エーテルがセシウムカチオンに配位することも塩基性の向上に寄与する。また、研究当初に副反応として想定していた、ハロゲンダンス、ベンザイン形成、1電子移動型反応による脱ハロゲン化等よりも、望みのカルボキシル化反応が優先的に進行することも示した。一方、比較実験として、アルゴン雰囲気下、1,3,5-トリブロモベンゼンに複合ブレンステッド塩基を作用させた際には、複雑な反応系を与えた。このことから、本反応系は、炭素(sp2)-水素結合が脱プロトン化して生じるアリールアニオン種が二酸化炭素と速やかに反応できる環境にあるために、アリールアニオン種を起点とする副反応が抑制されたものと理解している。基質適応範囲についても検討し、2つのハロゲン原子を有する、1,3-ジハロベンゼン類もカルボキシル化の反応基質として用いられることを示した。さらに、今回のカルボキシル化反応は、求電子性官能基のシアノ基、ニトロ基、ケトン、アミド、スルホンアミド部位をもつ基質にも適応でき、高い官能基共存性を有することも明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究開始時の予定通り、ジハロベンゼンおよびトリハロベンゼン中の炭素(sp2)-水素結合のカルボキシル化反応系の最適化および基質適応範囲の評価を行った。様々な置換基をもつ基質で効率的に反応が進行することを示した。このことから、本研究はおおむね順調に進展していると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
芳香族および芳香族複素環中の炭素-水素結合のカルボキシル化反応について、より高い効率性および官能基共存性を与える反応条件を確立する。
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