2020 Fiscal Year Research-status Report
フロンティア開拓に向けたロジウム触媒の再使用,反応重奏化と創薬への展開
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19K06971
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Research Institution | University of Toyama |
Principal Investigator |
矢倉 隆之 富山大学, 学術研究部薬学・和漢系, 教授 (70220126)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | ロジウム触媒 / 再使用 / 反応重奏化 / 創薬 / イリド / C-H挿入 / C-Hアミノ化 |
Outline of Annual Research Achievements |
ジアゾ化合物の金属触媒による金属カルベノイド反応はすでに工業的にも利用されてはいるものの,これまで有機合成への利用は限られていた。しかし,本反応は「誰もが使える」反応でかつ「環境調和型」である数少ない反応の一つであることから,本反応の開発は未来の有機合成化学のフロンティア開拓になりうる。そのため,本反応の利用拡大を目的として,新規回収・再使用容易な触媒の創製,新規なカルベノイド反応の開発とその天然物合成・創薬化学への展開の3つの観点にて研究している。 1)新触ロジウム媒創製:ロジウム触媒の磁性鉄ナノ粒子であるマグネタイトへの担持を検討している。 2)ロジウムカルベノイド,ニトレノイドの反応重奏化 連続触媒反応(カルベノイドイド形成-転位-ニトレノイド C-H アミノ化およびカルベノイド C-H挿入-ニトレノイド C-H アミノ化)の構築:立体選択的ロジウム触媒オキソニウムイリド形成―[2,3]-転位反応,7-アミノスルホニルオキシ-2-ジアゾ-5-メタリルオキシ-3-オキソヘプタン酸メチルのワンポットロジウム触媒O-イリド形成―[2,3]-転位反応-ニトレノイド C-H アミノ化,3-(2’-アミノスルホニルオキシプロピル)フェニル-3-オキソ-2-ジアゾプロパン酸メチルの立体選択的ロジウム触媒C-H挿入反応-ニトレノイド C-H アミノ化反応を開発した。 3)生物活性天然物の合成と創薬化学研究への展開:トリパノソーマ属原虫が原因となる感染症(トリパノソーマ症)の治療薬候補として期待されている抗トリパノソーママクロリドactinoallolide A の合成を検討し,マクロラクトン部の合成に成功した。また,側鎖部の合成を検討中である。さらに血管新生阻害活性を持つことから,医薬品リード候補化合物として注目されている pseurotin A のの中心2環性部分の構築を達成した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1)磁性鉄ナノ粒子担持ロジウム触媒の創製:磁性鉄ナノ粒子にカルボキシ基を導入し,酢酸ロジウムとの配位子交換反応を種々の条件で検討中。 2)ロジウムカルベノイド,ニトレノイドの反応重奏化:i) カルベノイドイリド形成-転位-ニトレノイド C-H アミノ化の開発;ケトンのalpha位にシクロプロピル基を持ち,スルファマート部位を持つalpha-ジアゾ-beta-ケトエステル をRh2(OAc)4 と反応させ,次いでPhI(OAc)2を加えると,O-イリド形成-[2,3]-シグマトロピー転位続くニトレノイドの発生による C-H アミノ化が収率よく進行することを見出した。ケトンのalpha位にシクロプロピル基を持たない場合はさらにbeta-脱離が進行してジエノンが得られるが,アミン塩基を添加すると効率的に脱離が起こることを見出した。 ii) カルベノイド C-H 挿入-ニトレノイド C-H アミノ化の開発:3-(2’-アミノスルホニルオキシプロピル)フェニル-3-オキソ-2-ジアゾプロパン酸メチルを合成し,その連続的C-H挿入-C-Hアミノ化反応を検討した。 3)天然物の合成への応用:ケトンのalpha位にシクロプロピル基およびスルファマート部位を持つalpha-ジアゾ-beta-ケトエステルの連続的O-イリド形成-[2,3]-シグマトロピー転位C-H アミノ化反応によるフランノン構築,続く分子内オレフィンメタセシスによりactinoallolide A のマクロライド部の合成に成功し,側鎖の部の構築を検討出来た。また,連続的O-イリド形成-[2,3]-シグマトロピー転位-ニトレノイドC-H挿入-beta-脱離反応によりpseurotin A のフラノン部を合成し,ヨードラクトン反応により2環性部を構築できた。 以上より,ほぼ順調と考える。
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Strategy for Future Research Activity |
1)磁性鉄ナノ粒子担持ロジウム触媒の創製:現在やや停滞中であるが,磁性鉄ナノ粒子への官能基導入と酢酸ロジウムとの配位子の方法や順序をさらに検討す る。 2)ロジウムカルベノイド,ニトレノイドの反応重奏化:反応条件のoptimize と基質のバリエーションを検討して,応用性の高い反応へ導いていく。 3)天然物の合成への応用:トリパノソーマ活性actinoallolide A の合成および血管血管新生阻害活性pseurotin A の合成を達成する。
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Causes of Carryover |
学内業務が多かったこと,年度末の学会が中止になったために,学会参加が少なく,また,実験補助等も少なかったため,旅費,人件費,謝金が当初予定額より少なかった。その額が未支出となった。次年度は新型コロナウイルスの問題の改善が見込まれるため,研究活動が活発となり,旅費,人件費,謝金として使用する予定である。
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