2019 Fiscal Year Research-status Report
高反応性環状超原子価ヨウ素反応剤の創製を基盤とする新規結合構築法の開発
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19K06977
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Research Institution | Gifu Pharmaceutical University |
Principal Investigator |
多田 教浩 岐阜薬科大学, 薬学部, 講師 (20468234)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
伊藤 彰近 岐阜薬科大学, 薬学部, 教授 (10203126)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 超原子価ヨウ素 / アミノ酸 / ペプチド / イナミド / エナミド |
Outline of Annual Research Achievements |
新規結合構築法の開発は有用物質の創製を行う上で重要であるが、アミノ酸やペプチドなどを用いる場合温和な反応条件が必要となり、これらに適用可能な反応の開発が急務である。我々はこれまでに、日本が誇る資源であるヨウ素の有効活用と高付加価値化を念頭に、高反応性超原子価ヨウ素化合物であるエチニルベンズヨードキソロンのアセトニトリル複合体の合成に成功している。そこで本研究では、エチニルベンズヨードキソロンの合成技術と知見を用いた高活性超原子価ヨウ素化合物の創製を基盤とし、超原子価ヨウ素化合物の高反応性を活用する新規結合形成法の開発を実現すべく検討を行った。その結果、1) エチニルベンズヨードキソロンがアセトニトリル以外の溶媒とも一定の比率で複合体を形成することを見出し、水との複合体の構造をX線結晶構造解析により明らかにした。2) エチニルベンズヨードキソロンを用いることで、各種アミノ酸やペプチドから誘導したスルホンアミドのエチニル化反応が温和な条件で進行することを見出した。3) 銅触媒とリガンドを用いることで、これまで不可能であったアミノ酸やペプチド由来のアルキニル化によるイナミド合成法を開発した。4) アミノ酸誘導体やフェノールを温和な条件でビニル化した新規ビニル超原子価ヨウ素化合物の合成と、それらを用いるカップリング反応を開発した。5) 様々なアミノ酸をリガンドとして持つ環状超原子価ヨウ素化合物を用いた1,3-ジカルボニル化合物のC-Hエステル導入法を見出した。6) 新規超原子価ヨウ素化合物であるTIPS-ジイニルベンズヨードキソロンの合成に成功し、1,3-ジカルボニル化合物のジイニル化反応を見出した。7) エチニルベンズヨードキソロンを用いる温和な条件でのイミダゾリジノン合成法を開発した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、申請書に記載した計画に留まらず、本研究を順調に進展させることができた。具体的には、1) エチニルベンズヨードキソロンがクロロホルム、酢酸エチル、水とも複合体を形成することを見出し、配位による不安定超原子価ヨウ素化合物の合成に重要な知見を得た。クロロホルム複合体はアミドビニル超原子価ヨウ素化合物の合成に有用であることが明らかになった。2)アミノ酸およびペプチドから誘導した新規イナミド類を得ることができたため、今後の新規アミノ酸誘導体の合成を行う準備が整った。3) 銅触媒とリガンドを用いることで、これまで合成不可能であったアミノ酸由来内部イナミド類の合成が可能となり、現在論文作成中である。またこの結果はこれまで難題であった銅触媒によるアルキンのホモカップリング反応を抑制できたことを示しており、今後の新規反応の開発に繋がる重要な知見を得ることができた。4) 天然に豊富に存在するアミノ酸やフェノール類を温和な条件で誘導体化することが可能であり1報の論文が掲載され、さらに1報の論文を作成中である。5) 1,3-ジカルボニル化合物のC-Hエステル導入法を見出すことができたが、不斉反応への応用は実現できておらず来年度もさらなる検討が必要である。6) 研究過程で、申請書に記載した計画に留まらず、新規な超原子価ヨウ素化合物であるTIPS-ジイニルベンズヨードキソロンの開発に成功し1,3-ジカルボニル化合物のジイニル化反応を検討している。7) さらに、エチニルベンズヨードキソロンを用いる温和な条件でのイミダゾリジノン合成法を見出すことができ、現在論文作成中である。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究の推進方策については、交付申請書に記載した令和2年度以降の研究計画に従い、合成した新規イナミド類を用いるハイブリッド化合物の合成や、C-H官能基化反応の開発を行う。また、銅触媒を用いる反応はさらに新規反応の開発に展開していく。また、ビニル超原子価ヨウ素を用い、他の手法では合成困難なアルケン類の合成を行う。C-Hエステル導入法では不斉反応への適用を検討するとともに、C-H官能基化や光反応への適用を開始する。さらに、申請書に記載した計画に留まらず、TIPS-ジイニルベンズヨードキソロンを用いるジイニル化反応の確立と、生成物を用いる環化反応による多環式化合物の迅速合成を行なう。
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