2019 Fiscal Year Research-status Report
高性能二核ホウ素触媒の創出を基盤とするペプチド化学合成法の開発
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19K07000
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Research Institution | Kitasato University |
Principal Investigator |
嶋田 修之 北里大学, 薬学部, 講師 (00455601)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 有機ホウ素化合物 / ボロン酸 / アミド化 / ペプチド / ヒドロキシカルボン酸 / 脱水縮合 / アミノ酸 / 化学選択的分子変換 |
Outline of Annual Research Achievements |
近年、生命科学研究および物質科学研究の両分野において、ペプチドを素材とする機能性分子ツールの需要が急速に増加している。これらペプチド分子ツールを創製するための技術的基盤となるのがペプチドの化学合成である。特に、近年期待が寄せられているペプチド創薬の迅速化には、ペプチド合成に革新をもたらす技術の開発が必要不可欠である。従来、ペプチド化学合成法としては固相合成法が汎用されてきたが、高純度ペプチドを量的にかつ低コストで製造するためには、いまだ多くの課題が山積しているのが現状となっている。本研究は、入手容易なアミノ酸どうしの脱水縮合型アミド化反応を効率的に促進する新規触媒の創出を目指す。 触媒的ペプチド結合形成反応の開発に先立ち、前例がほとんど知られていないヒドロキシカルボン酸を基質としたアミド化反応をベンチマークとして選定し、種々触媒候補分子の探索を重ねた。その結果、これまで触媒として顧みられることのなかったジボロン酸無水物がアミド化反応の触媒として機能することを見出した。すなわち、ビアリールを基本骨格としたジボロン酸無水物誘導体がα-もしくはβ-ヒドロキシカルボン酸のアミド化反応を効率的に促進することが明らかとなった。なお、ジボロン酸無水物の触媒量は最大で0.01 mol %まで低減可能であり、触媒回転数は最高で7,500回転を記録した。また、本触媒反応は単純カルボン酸と比較して、ヒドロキシカルボン酸に対して極めて高い化学選択性を示すことも併せて明らかにすることができた。さらに、応用研究の一環として散瞳薬であるトロピカミドの合成を行い、我々が開発した触媒反応が医薬品の効率的な化学合成に有用であることを示すことができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度となる令和元年度は、本研究の目的である触媒ペプチド結合形成反応を開発する上で最重要課題となる新規触媒候補分子の創出に成功した。また、触媒的かつ官能基選択的脱水縮合型アミド化反応を開発し、ペプチド結合形成反応の開発の端緒となる知見を得た。以上のことから、本研究は順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究は計画通りに推移していることから、令和二年度も引き続き、研究実施計画に従い、研究を推進する。初年度の研究成果により、ジボロン酸無水物がβ-ヒドロキシカルボン酸を基質としたアミド化反応において高活性な触媒として機能することが明らかとなった。そこで今後は、β-ヒドロキシカルボン酸部位を有するα-アミノ酸であるセリンやトレオニン誘導体をカルボン酸基質として用いた触媒的ペプチド結合形成反応の開発を目指し、種々反応条件の精査を行う。また、これまでに得られた検討結果より、ジボロン酸無水物を触媒とするアミド化反応は、β-ヒドロキシカルボン酸に対して極めて高い化学選択性を示すことが明らかとなっている。こうした知見を踏まえ、β-ヒドロキシ-α-アミノ酸残基選択的ペプチド結合形成反応の実現を目指す。具体的には、単純α-アミノ酸共存下での各種競争実験を実施し化学選択性の評価を行う。さらに、触媒の構造修飾に基づいたさらなる高活性触媒の創出についても併せて検討を進める計画である。
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Research Products
(15 results)