2019 Fiscal Year Research-status Report
水中で機能するπ-ベンジルパラジウムを利用したベンジル位C-H結合の直接的変換法
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19K07003
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Research Institution | Toho University |
Principal Investigator |
氷川 英正 東邦大学, 薬学部, 准教授 (20550619)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | パラジウム / C-H結合活性化 / 水 / ベンジル化 |
Outline of Annual Research Achievements |
水中で機能するπ-ベンジルパラジウム錯体のC-H結合活性化能を活用した連続的分子変換法の開発を行っている。はじめに、イサト酸無水物、ベンジルアルコール及びメチルアミンの3成分からPd触媒を用いた連続反応によって、キナゾリノンを単離収率98%で合成することに成功した。続いて、アントラニル酸アミドの脱水型連続ベンジル化反応を達成した。アントラニル酸アミド、塩化パラジウム(5 mol%)、水溶性リガンドTPPMS(10 mol%)及びベンジルアルコールを水中で120 ℃、20時間加熱したところ、N-ベンジル化/ベンジル位C-Hベンジル化連続反応が進行し、ジベンジル体を収率76%で得られた。さらに、イサト酸無水物から調製したピロリジンやピペリジン環を有する基質を用いても良好な収率でジベンジル体を与えた。 これら水の反応促進効果に関する知見を基にして、Pt(II)触媒を用いた電子不足なインドールへの触媒的脱水型Friedel-Craftsベンジル化反応に応用した。本反応は,水以外に副成生物を生じないため,環境調和型合成法を実現するとともに、生成する水が有機溶媒中において脱水型炭素-炭素結合形成反応を促進する特徴を有している。一般的な金属触媒反応において、水は排除すべきものと考えられるが、本法は水を活用したベンジルアルコールの触媒的脱水型分子変換法である(Org.Chem.Front.2019,6,3150)。 さらに、Pd(0)/TPPMS触媒を用いたborrowing hydrogen機構に基づく脱水的カップリング反応を開発した。本反応はaminoisoquinolineに対しbenzyl alcoholをベンジル化剤として用い、水中で直接的官能基化を行った最初の例である(Eur.J.Org.Chem.,2020,539)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
水中におけるPd触媒を用いたイサト酸無水物の脱水型連続反応に関する研究成果を日本薬学会第140年会(京都)で発表することができた。さらに、Pt(II)触媒を用いた電子不足なインドールへの触媒的脱水型Friedel-Craftsベンジル化反応およびPd(0)/TPPMS触媒を用いたborrowing hydrogen機構に基づくaminoisoquinolineとbenzyl alcoholの脱水的カップリング反応に関する研究成果が、それぞれ国際学術雑誌Org.Chem.Front.およびEur.J.Org.Chem.に掲載された。
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Strategy for Future Research Activity |
水中におけるPd触媒を用いたイサト酸無水物の脱水型連続反応における基質適用範囲の拡大、反応機構の解明などを行う。
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