2019 Fiscal Year Research-status Report
神経変性疾患特異的1型ミクログリアを標的としたアルツハイマー病治療法の開発
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19K07004
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Research Institution | Nigata University of Phermacy and Applied Life Sciences |
Principal Investigator |
川原 浩一 新潟薬科大学, 薬学部, 准教授 (10347015)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | アルツハイマー病 / 1型ミクログリア / 神経変性疾患特異的ミクログリア / GPNMB / レチノイド受容体 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、Gpnmb陽性1型ミクログリアを標的としたアルツハイマー病治療法を開発することである。本年度は、昨年度までに我々が見出した、「9月齢のADモデルマウス (APP23) の空間記憶障害が、Gpnmb遺伝子を半減させると記憶障害が改善される」という実験データについて、別のADモデルマウスでも再現されるかを調べた。 Aβ前駆体タンパク質 (APP) とプレセニリン-1 (PS-1) を過剰発現させた雄性の5xFADマウスと雌性Gpnmb+/-マウスを交配させることで、9月齢の5xFAD;Gpnmb+/-、5xFAD;Gpnmb+/+ (5xFAD)、Gpnmb+/-、およびGpnmb+/+ (WT) マウスを作出した。これらの4種のマウスの空間認知力を、モリス水迷路試験を用いて調べた。上記の繁殖に用いた雄性5xFADマウスは、視覚障害の遺伝的背景を回避するために、C57BL/6J系統で少なくとも10世代戻し交配を行なった後、繁殖に使用した。Training trialにおいて9月齢の5xFADマウスは、WTマウスに比べ、空間学習能力に障害が認められた。一方、5xFAD;Gpnmb+/-マウスでは5xFADマウスに比べて空間学習障害の改善がみられた。またProbe testにおいても、5xFAD;Gpnmb+/-マウスでは空間認知障害の改善傾向がみられた。以上のことから、2つのADモデルマウス (APP23, 5xFAD) において、Gpnmb遺伝子を半減させると、空間記憶障害が改善されることが強く示唆された。しかしながら、5xFADマウスの空間記憶障害については、雌雄差が認められたため、この要因にGpnmbが関与するのかを含め、引き続き検討を行い、明確化する必要がある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題の根幹をなす我々の予備データについて、別のモデルマウスでも再現できたことは、順調に進展していると考えられるため。
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Strategy for Future Research Activity |
これまで、ヘテロマウス (Gpnmb+/-) での検討を進めてきたが、Gpnmb遺伝子を完全に欠損させた場合は、どのような影響が見られるかを調べる。APP23;Gpnmb+/-マウスや、5xFAD;Gpnmb+/-マウスで見られた空間認知障害の改善作用の機序を明らかにする。GPNMBがAβ病理や神経炎症に与える影響を調べるために、脳 (海馬, 大脳皮質) からホモジネートを調製し、Aβや炎症性サイトカインの変動をELISA法を用いて定量する。また、GPNMBとAβの関係について、Gpnmb KOミクログリアとWTミクログリアを用いたin vitro実験で調べる。
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Causes of Carryover |
3千円弱の次年度使用額が生じた理由は、次年度の予算と合わせて、液体窒素を購入しようとしたためである。年度明けに速やかに液体窒素を購入し、9F5ハイブリドーマを保管している凍結保存容器へ液体窒素を補充する。
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