2020 Fiscal Year Research-status Report
神経変性疾患特異的1型ミクログリアを標的としたアルツハイマー病治療法の開発
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19K07004
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Research Institution | Nigata University of Phermacy and Applied Life Sciences |
Principal Investigator |
川原 浩一 新潟薬科大学, 薬学部, 准教授 (10347015)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | アルツハイマー病 / 1型ミクログリア / 神経変性疾患特異的ミクログリア / GPNMB / レチノイド受容体 / オリゴマー状Aβ |
Outline of Annual Research Achievements |
昨年度までに我々は、9月齢のアルツハイマー病 (AD) モデルマウスにおいて、Gpnmb遺伝子を半減させると、空間記憶障害が軽減することを見出した。しかしながら、GPNMBがどのようにAD病態の形成に関与するのかは明らかとなっていない。また、ADにおいて毒性の本体と考えられているオリゴマー状のアミロイドβ(o-Aβ)とGPNMBの関係についても不明である。生理的にミクログリア (MG) は、o-Aβなどの毒性物質が脳内に生じた場合、速やかに貪食分解し、常態に復する役割を担っていると考えられるが、病態時においては、o-Aβを取り込むことで慢性的な炎症を誘発する危険な細胞として捉えられている。 そこで我々は、Gpnmb 遺伝子欠損MGと野生型MGを調製し、o-Aβのクリアランス能に差が見られるかを調べた。また、o-Aβによって引き起こされる炎症反応にGPNMBが関与するかを調べた。o-Aβのクリアランス活性は、これまで我々が開発した方法(Shimizu, Kawahara et al., J Immunol, 2008; Kawahara, Suenobu et al., J Alzheimers Dis, 2014)により調べた。すなわち、Aβ1-42・HCl塩からo-Aβを調製した後、Iodogen法を用いてo-Aβを[125I]標識した。Freeの[125I]を除去した後、[125I]o-Aβ1-42をGpnmb欠損マウスと野生型マウスから調製した1型MGに添加し、[125I]o-Aβ1-42の取り込み分解活性を調べた。その結果、Gpnmb 欠損マウス由来の1型MGは、野生型1型MGに比べて、[125I]o-Aβの分解活性が有意に低かった。また、低濃度LPSとo-Aβのコンビネーションによって誘発されるiNOSの誘導は、Gpnmb欠損1型MGの方が野生型1型MGよりも低かった。以上の結果より、1型MGに発現するGPNMBは、o-Aβのクリアランスとo-Aβによる炎症反応の両方に関与する可能性が明らかとなった。これらについては、まだ他の研究者による報告がないため、別の実験方法などを含め、再現性を注意深く調べる必要がある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
GPNMBとオリゴマー状Aβの関係について新たな知見が得られ、理解が進んだと思われるため。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度解析に用いた[125I]o-Aβ1-42には、オリゴマーだけでなく、未重合のモノマーAβ1-42も混入しているため、厳密にオリゴマーのみを分画したサンプルを調製し、degradation/association assayを行う。また、AD治療法を開発する上では、ヒトMGでの検討が欠かせない。さらに、可能であればヒトGPNMBの機能をコントロールできる薬物候補がほしい。今年度は、in vitroの研究を進めたが、来年度はin vivoの研究も進める。
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Causes of Carryover |
アイソトープの購入が年度末であったため、支払いが年度を跨いでしまった。
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