2020 Fiscal Year Research-status Report
テンプレート効果を利用するアミド近傍ヒドロキシ基選択的化学修飾法の開発
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19K07007
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Research Institution | Meijo University |
Principal Investigator |
西川 泰弘 名城大学, 薬学部, 助教 (20633580)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 位置選択性 / アシル化 / グリコシル化 / 糖ペプチド |
Outline of Annual Research Achievements |
複雑化合物への機能付与を目的とした選択的修飾法が注目を集めている。これを達成する一つの手段となる位置選択的反応は、複数存在する同一官能基の中から特定の部分だけを選択的に反応させる方法論であり、その開発が強く望まれている。昨年度までに、β-ヒドロキシアミド選択的アシル化反応を見出しており、これを受けて今年度はより複雑な基質への位置選択的アシル化反応の応用と位置選択的グリコシル化反応に取り組み、以下の結果を得た。 1)これまで検討が行われていなかったN-グリコリル構造含有二糖への位置選択的アシル化反応を実施し、多数の無保護ヒドロキシ基存在下、α-ヒドロキシ基を位置選択的にアシル化することに成功した。 2)O-結合型糖ペプチドのセリン残基選択的アシル化反応において、ビオチン化を検討し、位置選択的ビオチン化に成功した。一方で糖ペプチドの基質一般性を検討すべくN-結合型糖ペプチドの基質合成を試みたが、C末端のAspエステルの安定性が低く、望みの基質が純度よく得ることができず、一般性の確認には至っていない。 3)グルコース1位にピリジンオキシム構造を有する新たなグリコシルドナーの合成を行った。金属イオン存在下グリコシル化反応を試みたが、ドナーの低反応性が明らかとなった。そこで、反応性を向上すべく1位の官能基をオキシムからオキシムカーボネート型およびヒドラゾンからなるカルバメート型ドナーを合成した。次にβ-ヒドロキシアミドとフェネチルアルコールを用いて基質選択的グリコシル化反応を検討したところ、低収率かつ中程度の選択性ながらβ-ヒドロキシアミドへの選択的なグリコシル化を確認した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
α-およびβ-ヒドロキシアミドの位置選択的アシル化反応については、より複雑な基質への応用を達成することができた。一方で、基質選択的グリコシル化反応については、反応収率が向上できておらず、より一層の改善が必要である。
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Strategy for Future Research Activity |
O結合型糖ペプチドに対する位置選択的アシル化反応を検討中に、予期せぬ位置選択性を確認した。当初の計画とは異なるものの、この事象をより追求していきたいと考えている。β-ヒドロキシアミドに対する選択的グリコシル化反応についてはグリコシルドナーの構造変換も含めた条件検討を重ね、収率および選択性の向上を目指したい。
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Causes of Carryover |
令和2年度は研究室所属学生の実務実習に遅れが生じたことから、研究の実施および試薬、消耗品類の研究経費執行が年度後半へと移行することとなった。そのため、令和2年度としてはわずかに残額が生じたが、3月に多くの実験が行われたため残額はほぼ3月に執行された。収支状況としては令和3年度へと繰り越された形となっているがほぼ予定通りに執行できたと考えている。令和3年度は、研究に使用する試薬、消耗品類への支出が中心で主要な物品の導入は予定していない。複雑な反応混合物の解析を効率良く実施するために、既存のHPLCシステムの拡張を計画している。
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