2019 Fiscal Year Research-status Report
知識ベースを活用したHLA提示抗原ペプチド予測法の開発
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19K07029
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Research Institution | Showa University |
Principal Investigator |
合田 浩明 昭和大学, 薬学部, 教授 (60276160)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | HLA / 抗原ペプチド / データベース / 相互作用 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、先ず、ヒトの主要組織適合遺伝子複合体であるHLAクラスI分子(HLA-I)が提示する抗原ペプチドを知識ベースで予測するために必要な、「特性球表現されたHLA-Iポケット-抗原ペプチド構成アミノ酸ペア」からなる相互作用データベースの構築手順の確立を行った。本データベースは、Protein Data Bankに登録されているHLA-I-抗原ペプチドの複合体結晶構造を使用して、(1)結晶構造の前処理(水素原子付加など)、(2)HLA-Iの抗原結合ポケット(A~Fの6種類のポケット)と各ポケットに結合している抗原アミノ酸残基の抽出、(3) 抗原結合ポケットへの物理化学的特性球の配置、という手順で構築される。(1)及び(3)に関しては、研究室で利用可能な既存のプログラムで実施可能であったが、(2)については新たにプログラムを作成する必要があった。そこで本年度は、(2)を実行するための新たなプログラムをFortran言語で作成した。そして、本プログラムを利用し、解像度が2オングストローム以下の高解像度結晶構造(約250構造)を用いて、データベースの構築を試行した。その結果、小規模ながら、HLA-IのA~Fのポケットそれぞれに対して、約250個の「特性球表現されたHLA-Iポケット-抗原ペプチド構成アミノ酸ペア」を収集できた。そこで、各ポケットに結合する抗原アミノ酸の分布を予備的に解析したところ、ポケットFにはPhe及びTrpが高頻度で結合していることが確認できた。また、構築したデータベース中のHLA-Iポケットの類似性評価、及びポケットと抗原ペプチド構成アミノ酸の相互作用評価が可能となるSubroutineをFortran言語にて作成した。このように、本年度は、データベース構築手法と基本的な解析手法を確立するに至った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度はHLA-Iと抗原ペプチドの複合体結晶構造から、HLA-I の抗原結合ポケットA~Fの構成アミノ酸残基と各ポケットに結合している抗原ペプチド構成アミノ酸のペア(HLA-Iポケット-抗原ペプチド構成アミノ酸ペア)を取り出すためのコンピュータプログラムをFortran言語で作成した。本プログラムは、本年度前半までに完成した。これにより、研究室で利用可能な既存のプログラムと組み合わせることで、(1)結晶構造の前処理(水素原子付加など)、(2)HLA-Iの抗原結合ポケットとポケットに結合している抗原アミノ酸残基の抽出、(3) 抗原結合ポケットへの物理化学的特性球の配置、をコンピュータ上で効率よく実行する手順を確立することができた。また、この手順により、解像度が2オングストローム以下の高解像度結晶構造(約250構造)を使用して、小規模ながらHLA-Iポケット-抗原ペプチド構成アミノ酸ペアのデータベースを構築できた。これにより、HLA-Iの各ポケットに結合する抗原ペプチドのアミノ酸の分布などについて予備的な解析が可能となり、ポケットFにはPhe及びTrpが高頻度で結合していることも確認できた。また、特性球表現されたHLA-Iポケット構造の類似性を評価するためのSubroutineをFortran言語にて作成し、構築したデータベース中の各ポケットの類似性評価が可能となった。当研究室では、別の研究課題として、「量子化学計算とプローブ分子を用いた分子相互作用場の算出方法」を先行して開発してきたが、本研究で開発した類似性評価を実施するSubroutineを改良し、先行して別途開発した分子相互作用場計算と組み合わせる事で、量子化学計算レベルでの相互作用エネルギー評価が可能となった。したがって、「おおむね順調に進展している」と評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
今後、Protein Data Bankに登録されている解像度3オングストローム以下の構造(約620構造)を用いて、より規模の大きなデータベースを構築し、HLA-Iの各ポケットに結合している抗原アミノ酸の分布解析など様々な解析を本格的に実施する。また、データベース構築にあたっては、データベースに収載されている内容をできるだけ詳細にしかもわかりやすく記載する事で、利用価値が高まると期待できる。そこで、各ポケットを構成するアミノ酸や、結合する抗原アミノ酸残基の種類のヒストグラムなどを表示するプログラムの作成などを実施する。
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