2020 Fiscal Year Research-status Report
知識ベースを活用したHLA提示抗原ペプチド予測法の開発
Project/Area Number |
19K07029
|
Research Institution | Showa University |
Principal Investigator |
合田 浩明 昭和大学, 薬学部, 教授 (60276160)
|
Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
|
Keywords | HLA / 抗原 / 相互作用 / データベース |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、先ず、昨年度確立した方法に基づき、「特性球表現されたHLA-Iポケット-抗原ペプチド構成アミノ酸ペア」のデータベースの拡張とそのデータベースを用いた解析を行った。解像度が3オングストローム以下の結晶構造約600構造を用いて、約600個の「特性球表現されたHLA-Iポケット-抗原ペプチド構成アミノ酸ペア」を得た。構築したデータベースを詳細に解析したところ、あるアミノ酸配列をもつHLA-Iポケットには、いくつかの限られた抗原アミノ酸が結合している傾向が見られた。これは、個々のポケット構造が結合しやすいアミノ酸の種類の傾向を知るために、本データベースを活用できる可能性を示している。抗HIV薬アバカビルはHLA-B*57:01に結合することで、HLA-B*57:01が提示する抗原ペプチドを変化させることが知られている。そこで、次に、本データベースを活用することで、この変化を捉えることができるか確認した。すなわち、アバカビルが結合したHLA-B*57:01のポケットFと、結合していないHLA-B*57:01のポケットFについて、データベースに収載されているポケットFとの類似性を特性球の配置の観点から評価した。この際、HLA-B*57:01に結合しているアバカビルにも特性球を配置することで、ポケットFに対する薬物結合の影響を特性球の配置の変化として取り入れた。解析の結果、アバカビルが結合することで、HLA-B*57:01のFポケットが、芳香族アミノ酸も結合できる構造から、アルキル鎖をもつ疎水性アミノ酸と結合しやすいポケットへと性質が変化することが示唆された。この傾向は実験結果と一致していた。以上の結果により、本データベースを用いたポケット構造の特性球表現に基づいた類似性評価によって、各ポケットに結合しやすいアミノ酸残基の傾向を予測できる可能性を示すことができた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、データベースの拡張と、そのデータベースを活用した解析を実施した。データベースを約250構造から約600構造へと倍以上の規模へ拡大することができた。これは、現在知られている解像度3オングストローム以下のHLA-Iの結晶構造のほぼ全てを用いて作成されたものである。さらに、作成したデータベースと解析プログラムを用いた解析により、HLA-Iの各ポケットに結合しやすいアミノ酸残基の特性の傾向を予測できる可能性を示すことができた。以上の実績より、おおむね順調に進展していると評価した。
|
Strategy for Future Research Activity |
来年度は、抗HIV薬アバカビルとHLA-B*57:01の系に関して、HLA-B*57:01のポケットF以外のポケットについても解析することで、本手法の有用性をさらに詳しく検証する。
|