2020 Fiscal Year Research-status Report
薬物送達効率向上に向けたナノ粒子の多次元物性パラメータによる細胞との相互作用解析
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19K07039
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Research Institution | Kitasato University |
Principal Investigator |
加藤 くみ子 北里大学, 薬学部, 教授 (10398901)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | エクソソーム / リポソーム / 物性 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、脂質ナノ粒子を種々作製し、細胞内取り込み後の、エンドソーム膜との融合、内包薬物の放出メカニズムを脂質ナノ粒子の物性に着目して解析するとともに、これらの動的過程を決定づける、脂質ナノ粒子側の重要な物性を探ることを目的としている。本年度は、昨年度の検討をもとに、膜融合性を有するリン脂質、コレステロール、PEG脂質、pH応答性脂質を用い、脂質ナノ粒子を調製した。異なるpH 応答性脂質を用いて、脂質ナノ粒子を調製したところ、見かけのpKa が中性付近のナノ粒子がよりsiRNA内包率が高い結果となった。これまでの我々の研究成果から、脂質ナノ粒子膜の動的挙動が脂質ナノ粒子と生体膜との相互作用に重要な役割を担っていることが示されている。一方、pH応答性脂質等を含有する脂質ナノ粒子に関して、エンドソーム内の環境変化に伴うナノ粒子膜の物理化学的特性変化については不明な点が多い。そこでラウルダンを用い脂質膜の流動性変化を評価した。pH応答性脂質含有比率の異なる複数の脂質ナノ粒子を調製しpH変化による膜流動性を精査した結果、いずれもpHの低下に伴い膜流動性が上昇し、その程度はpH応答性脂質の比率が高くなるほど増加した。本結果より、pHの低下に伴い正に荷電した脂質間の反発が膜流動性の上昇に寄与したと考えられた。さらに、siRNAを含む脂質ナノ粒子を細胞に投与した結果、pH応答性脂質含有比率の増加に伴い、siRNAによるβ-ガラクトシダーゼ活性の抑制効果が増加した。従って、エンドソーム内のpH低下に伴い膜の流動性が上昇した脂質ナノ粒子の方が、より効率的にsiRNAを細胞質内に放出すると考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では、エンドソーム膜との相互作用に関与すると考えられる脂質を取り入れたリポソームを作製した。pH応答性脂質の種類を変えることで高いsiRNA内包率を有するナノ粒子を調製することができた。膜の流動性を評価するために、ラウルダンを用いた水和度の測定系を構築し、pHの低下に伴うナノ粒子膜の流動性増加という物性変化が、siRNAの細胞内への送達効率に関わっていることを示唆する結果を得た。このように、目的を遂行するための研究が順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、弱酸性条件下における脂質ナノ粒子膜の状態変化及びエンドソーム膜モデルとの相互作用をより詳細に調べるとともに、得られた結果より効率的なsiRNA送達を達成する脂質ナノ粒子の創製を課題としていきたい。
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