2021 Fiscal Year Annual Research Report
膜タンパク質の膜貫通領域におけるシステイン残基を介したレドックス感知機構
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19K07040
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
徳永 裕二 東京大学, 大学院薬学系研究科(薬学部), 助教 (80713354)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
坂倉 正義 横浜市立大学, 生命医科学研究科, 助教 (20334336)
鴫 直樹 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 生命工学領域, 主任研究員 (20392623)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | NMR / タンパク質 / システイン / 硫黄修飾 / 高分子量タンパク質 |
Outline of Annual Research Achievements |
令和3年度は、大腸菌のtRNA硫黄修飾関連タンパク質TusEの構造解析を継続した。NMR緩和解析より、硫黄結合部位であるC末端領域は、積荷硫黄原子を付加していない状態においては高い運動の自由度を示すのに対して、硫黄原子を付加された硫化状態においては運動性を著しく減じることを見出した。このことより、硫黄修飾に伴いTusEのC末端領域は構造形成領域と相互作用することで、周囲の酸化性物質から積荷硫黄原子を保護する、との仮説が補強された。さらに、構造変化の生理的意義を明らかとするため、硫黄修飾に伴う構造変化に変調を来したTusE変異体を用いたin vivo解析を行った。共同研究者の鴫博士(産総研)とともに、内在性TusEをノックアウトした大腸菌に各種TusE変異体発現ベクターを導入した時の、大腸菌の増殖およびtRNA硫黄修飾率を解析した。この結果、TusE変異体はtRNAの硫黄修飾率および大腸菌の増殖速度をほとんど回復せず、硫黄修飾に伴う構造変化はTusEを介した硫黄運搬に重要であることが示唆された。 研究期間を通じて、嫌気チャンバー内で硫化修飾を施したタンパク質試料を特殊試料管に導入し、硫化タンパク質を数日以上、安定に保持することで、溶液NMR法による構造解析を可能とする試料調製法を確立した。TusEを対象として硫化状態のNMR解析を行うことにより、TusEは硫化に伴い大規模な構造変化を生じ、積荷硫黄原子を立体構造中に保護することにより、効率的な硫黄運搬を可能とする新規の構造メカニズムを見出した。また、このような硫化に伴うタンパク質の構造変化のNMR法による解析を、大腸菌脂質二重膜に埋め込まれた膜タンパク質を含む高分子量タンパク質に対しても実施可能とするNMR計測技術としてN-CRINEPT法を開発し、医療用抗体の構造解析に適用した結果をJ Med Chem誌に報告した。
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