2019 Fiscal Year Research-status Report
より現実的な化学物質のリスク評価を目指した生体異物センサー機能調節機序の解明
Project/Area Number |
19K07044
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
児玉 進 岡山大学, 医歯薬学総合研究科, 准教授 (20621460)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 核内受容体 / 異物センサー / ヘテロ2量体 / 転写調節 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、核内受容体PXRとCARの二面的機能、【1】転写活性化と【2】転写抑制において、ヘテロ2量体パートナーRXRがどのように協働するのか、その詳細を分子レベルで明らかにすることを目指す。本年度は、項目【1】と【2】の解析に用いるリガンドや結合DNA配列、標的遺伝子のプロモーター領域の検討・選定に取り組んだ。 【1】について、レポーターアッセイ系(ヒト肝癌由来HepG2細胞)を用いて、ヒトPXRアゴニストの探索を重点的に進め、既知の典型的フルアゴニストと比べ、同等、半分程度、約1割程度の活性化強度を有する化学物質をそれぞれ複数個同定した。並行して、既知の結合DNA配列をそれぞれ挿入したレポータープラスミドを新たに作製し、PXRとCARの転写活性化におけるRXRとの協働とそれらの結合DNA配列に対する依存性の検討を進めた。CARは構成的に高い転写活性化状態にあり、ヒト型を用いた場合、典型的アゴニストに対する応答を確認できなかった。そこで、マウス型を用いたところ、検討した3種の結合DNA配列うち1種では、典型的アゴニストと共に、RXRアゴニストによってもレポーター活性が有意に増強されることを確認した。他方、ヒトPXRでは、既報とは異なる結果が得られるなど、再現性に不十分な点が見られた。今後、解析諸条件の更なる最適化を進め、結合DNA配列の検討数を増やす予定である。【2】について、PXRの解析モデルとして既報を基に標的遺伝子Aの有用性を検討した。遺伝子Aのプロモーター領域を挿入したレポータープラスミドを作製し、レポーター解析を行った結果、典型的アゴニストによるヒトPXRの活性化によるプロモーター活性の抑制と、RXRの導入発現による抑制作用の増強を確認した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、申請計画に沿い、PXRとCARが有する二面的な転写調節機能におけるRXRとの協働の分子機序の解析に用いるリガンドや結合DNA配列、標的遺伝子の転写調節領域の検討・選定に重点を置いて研究を実施した。 【1】転写活性化能についての解析では、ヘテロ2量体を形成する受容体に結合するリガンドの特性と結合DNA配列の種類に着目した。レポーターアッセイ系を用いてヒト由来のPXRとCARのアゴニストを探索した結果、ヒトPXRに対する化学構造の異なるフルアゴニスト及びパーシャルアゴニストをそれぞれ複数同定した。ヒトCARの場合、野生型と2つのバリアントも検討したが、それらの機能的な特徴の為、従来のレポーターアッセイ系でのアゴニストの探索は実施が困難であった。そこで、次年度に転写共役因子との相互作用に基づいたin vitro評価系を構築して同定を試みる。結合DNA配列に対する依存性の検討では、CARの場合、マウス型を用いたところ、検討した3種の結合DNA配列うち1種で依存性を確認した。一方、PXRの場合は、既報とは異なる結果が得られたことから、アゴニストの組み合わせ、転写共役因子導入などの解析諸条件の最適化と他の結合DNA配列を検討する必要がある。【2】転写抑制能の解析について、当初、各々受容体を一過性発現させた細胞株を用いたモデル遺伝子のmRNA発現変動を指標にした解析を予定していたが、導入効率が低いなどの技術的な問題が生じた。そこで、レポーターアッセイ系を用いた標的遺伝子Aのプロモーター領域の解析を変更して実施し、PXRの解析モデルとして有用性を確認した。 以上のことから、実施項目に幾つかの変更があったが、課題などへの対応は明確化されており、最終的な目的に向けて大きな支障はないと考える。
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Strategy for Future Research Activity |
基本的には、交付申請書に記した計画に従い研究を進める。項目【1】について、①ヒトCARとコアクチベーターとの相互作用に基づくin vitro評価系の構築とそれを用いた新規ヒトCARアゴニストの同定、②レポーターアッセイ系を用いた結合DNA配列の検討と選定、③ヘテロ2量体の転写共役因子との相互作用に対するRXR活性化の寄与を解析するためのセルフリー試験系の構築、を進める。特に、②については、既知の転写共役因子を導入発現させることにより、それらとヘテロ2量体の組み合わせについても検討する。また、③については、受容体タンパク質の発現・精製方法と相互作用の検出方法の確立に並行して取り組む。項目【2】について、本年度の研究成果を基に、機能改変型RXR、受容体と相互作用する転写因子や転写共役因子の導入発現などを組み合わせ、PXR標的遺伝子Aのプロモーター領域をモデルに解析を進める。また、他の複数の標的遺伝子についても、同様の解析を進める。並行して、受容体の安定発現細胞株の作製を進める。各種手法を用いて、取得した安定発現細胞株内のRXRを量的・機能的に変化させ、内在性の標的遺伝子の解析を進める。
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Causes of Carryover |
【理由】 本年度は、PXRとCARの転写調節機能におけるRXRとの協働の分子機序の解析に用いるリガンドや結合DNA配列、標的遺伝子の転写調節領域の検討・選定に重点を置き、計画に沿って研究を進めた。解析に用いるモデルリガンドの選定において、当初、3種の受容体全てについてアゴニストの同定を計画していたが、それら各々のリガンド応答性の特徴を踏まえて、ヒトPXRに絞って優先的に実施した。また、受容体タンパク質の発現・精製に関して、必要機器の購入と受容体発現プラスミドの構築のみを行った。これらの理由から、予定額と実支出額に差異が生じた。 【使用計画】 次年度は、本研究課題の目的達成に向けて、研究計画及び推進方策に沿いながら、研究費を研究遂行に使用する予定である。その内訳として、受容体アゴニストの評価系構築と同定、受容体タンパク質の発現・精製、タンパク質間相互作用解析に必要な試薬類や消耗品の購入を中心に、また、得られた本研究の成果を学会及び学術雑誌において発表する為に使用する。
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