2023 Fiscal Year Annual Research Report
細胞膜タンパク質HAI-1の切断を介した新規細胞間接着とがん転移促進機構の解明
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19K07047
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Research Institution | Yokohama City University |
Principal Investigator |
東 昌市 横浜市立大学, 生命ナノシステム科学研究科(八景キャンパス), 教授 (10275076)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | MMP-7 / HAI-1 / コレステロール硫酸 / がん転移 / 細胞凝集 / セリンプロテアーゼ / マトリプターゼ / CRISPR-Cas9 |
Outline of Annual Research Achievements |
MMP-7は種々のがん組織で高発現しているマトリックスメタロプロテアーゼの一種であり、その発現はがん悪性度と高い相関を示す。私達はMMP-7により、がん転移が促進される機序として以下のことを明らかにしてきた。まず、活性型MMP-7が、がん細胞の細胞膜成分として存在するコレステロール硫酸と結合する。次にコレステロール硫酸と結合したMMP-7が近傍の細胞表層タンパク質であるHAI-1(hepatocyte growth factor activator inhibitor type 1)を切断することで、細胞凝集を惹起する。一方、2022年度までの研究で、MMP-7が誘導する細胞凝集メカニズムに膜型セリンプロテアーゼ活性が介在することが示唆された。 2023年度はMMP-7が誘導する細胞凝集メカニズムにおいてMMP-7の下流で作用すると考えられるプロテアーゼの候補としてHAI-1の標的酵素の一つであるマトリプターゼを想定し、CRISPR-Cas9 を用いてマトリプターゼ遺伝子を欠損させた大腸がん細胞株(Colo201)を樹立した。この細胞に、MMP-7を作用させたところ、野生型Colo201細胞と比較して細胞凝集が有意に遅延することが判明した。一方、マトリプターゼのセリンプロテアーゼドメインを調製し、野生型およびマトリプターゼ欠損Colo201細胞に作用させたところ、いずれの細胞株も同等に凝集することが判明した。これらの結果から、MMP-7とマトリプターゼがそれぞれ異なる細胞表層基質を切断し、協調的に細胞凝集を誘導する可能性が考えられた。事実、MMP-7とマトリプターゼのセリンプロテアーゼドメインを同時に野生型Colo201細胞に作用させると、短時間で強い凝集が誘導された。今後、細胞凝集誘導に関与するマトリプターゼの細胞表層基質タンパク質の探索を進めて行く予定である。
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