2019 Fiscal Year Research-status Report
核内転写制御因子PIAS1によるがん細胞の悪性化機構の解明
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19K07078
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Research Institution | Health Sciences University of Hokkaido |
Principal Investigator |
中川 宏治 北海道医療大学, 薬学部, 教授 (80360949)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | PIAS1 / HIF-1 / 低酸素応答 / 転写制御 / SUMO化修飾 / がん悪性化 |
Outline of Annual Research Achievements |
HIF-1依存的な転写制御におけるPIAS1の役割について解析を行った。 1)HIF-1依存的遺伝子発現に対するPIAS1の影響の解析: 293細胞およびU2OS細胞にPIAS1に対するsiRNAを導入し、低酸素下(1% O2)で培養した場合のHIF-1標的遺伝子の発現を定量的RT-PCR法により解析した。その結果、PIAS1のノックダウンによりGLUT1やAdrenomedullinなどのHIF-1標的遺伝子の発現が有意に低下し、PIAS1はHIF-1依存的遺伝子発現の正の制御因子であることが判明した。 2)HIF-1の転写活性に対するPIAS1の影響の解析:U2OS細胞に、PIAS1の発現ベクター、もしくは、PIAS1に対するsiRNAをHIF-1応答性のHREレポーター遺伝子と共に導入した後、低酸素下(1% O2)で培養し、HREレポーター活性をルシフェラーゼアッセイにより測定した。その結果、PIAS1の過剰発現はHREレポーター活性を増強させ、逆に、PIAS1のノックダウンはHREレポーター活性を減弱させた。これらの結果から、PIAS1はHIF-1依存的な転写の促進因子として機能することが判明した。 3)HIF-1αとPIAS1の結合性およびHIF-1αのSUMO化修飾の解析:293T細胞における過剰発現系を用いて、免疫沈降及びウェスタンブロット解析を行った結果、HIF-1αとPIAS1の共沈が確認され、両者は細胞内で複合体を形成することが示唆された。また、ユビキチン様の翻訳後修飾分子であるSUMO-1を、HIF-1αおよびPIAS1と共発現させることにより、HIF-1αのSUMO化修飾の促進が観察され、PIAS1はHIF-1αに対するSUMO化修飾のE3リガーゼ活性を有することが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
PIAS1によるHIF-1の転写活性制御の分子メカニズムの解析において、PIAS1依存的にリクルートされる転写共役因子が未確定であり、その点で若干の計画の遅れが生じている。
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Strategy for Future Research Activity |
1)引き続き、PIAS1によるHIF-1の転写活性制御の分子メカニズムの解析を行い、PIAS1依存的にリクルートされる転写共役因子を同定する。 2)PIAS1による低酸素応答制御の生理的意義の解析(①ゲノム編集によるPIAS1ノックアウト細胞の樹立、②血管新生因子発現への影響の解析、③癌細胞の運動性・浸潤性に対する影響の解析)を行う。
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