2020 Fiscal Year Research-status Report
細胞骨格との連携に着目したミトコンドリア品質異常機構の解明と慢性疾患治療への応用
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19K07085
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Research Institution | National Institute for Physiological Sciences |
Principal Investigator |
西村 明幸 生理学研究所, 生体機能調節研究領域, 特任准教授 (00457152)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | ミトコンドリア品質 / 慢性疾患 / 心疾患 |
Outline of Annual Research Achievements |
我々はこれまでに、心筋梗塞時に起こる心筋ミトコンドリアの異常分裂に着目し、病態特異的に強まるDrp1-filamin複合体形成(ミトコンドリア-アクチン骨格連携)がミトコンドリアの品質異常を誘導することで心疾患リスクを高めていることをマウスモデルを用いて明らかにしてきた。Drp1-filamin複合体形成を阻害する既承認薬シルニジピンが糖尿病モデル(Streptozotocin (STZ)投与モデル)マウスの血糖値上昇を改善するという結果を基に、肝臓ミトコンドリア品質におけるDrp1-filamin複合体形成の関与について検討を行った。 1型糖尿病のモデルマウスであるSTZ投与モデルマウスの肝臓のミトコンドリア形態を電子顕微鏡で観察したところSTZ投与によりミトコンドリアの膨潤が見られること、またシルニジピン投与によりそれが改善されることが明らかとなった。Proximity ligation assay法を用いてSTZ投与マウスの肝臓切片においてDrp1-filamin複合体形成が促進されていることも明らかとなった。また、高脂肪食による糖尿病モデルにおいても肝臓ミトコンドリアの膨潤化がみられ、シルニジピン投与によりミトコンドリア形態の改善およびインスリン抵抗性の改善が見られた。一方、レプチン欠損に起因する糖尿病モデルマウスであるob/obマウスに対してシルニジピンは改善効果を示さなかった。以上の結果から、シルニジピンはミトコンドリア形態異常を伴う糖尿病モデルにのみ有効性を示すことが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
心疾患以外の慢性疾患に対するDrp1-filamin複合体の関与について検討を行い、ミトコンドリア膨潤を伴う糖尿病モデルにDrp1-filamin複合体が関与していることを明らかにした。潰瘍性大腸炎モデルに対するシルニジピンの有効性についても明らかにしており、マクロファージの形質転換にDrp1-filaimin複合体が関与する可能性についても検証を進めている。
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Strategy for Future Research Activity |
高血糖や高脂肪といった過栄養により誘導される糖尿病モデルの肝臓においてDrp1-filamin複合体形成が促進されることを明らかにした。今年度はその分子メカニズムを明らかにする。これまでに活性イオウによるDrp1システイン624番のイオウ化修飾がDrp1-filamin相互作用を負に制御していることを見出しているので、過栄養条件が活性イオウ産生およびDrp1のポリイオウ化に与える影響について検討を行う。
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Research Products
(9 results)