2021 Fiscal Year Annual Research Report
多価不飽和脂肪酸貯蔵量の減少が及す生体への影響 ー新たな視点からのアプローチー
Project/Area Number |
19K07087
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Research Institution | Showa University |
Principal Investigator |
桑田 浩 昭和大学, 薬学部, 准教授 (80286864)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | ACSL4 / 高度不飽和脂肪酸 / 細胞死 / リポポリサッカライド |
Outline of Annual Research Achievements |
ACSL4は、高度不飽和脂肪酸 (HUFA) を基質とする酵素であり、アラキドン酸をはじめとするHUFAの生体内での利用に重要な酵素である。我々は本酵素の発現低下や欠損により刺激依存的に遊離したアラキドン酸の再取込みが阻害され、その結果としてエイコサノイドの産生量が増加することで、炎症反応を増悪化する可能性を指摘してきた。さらに、本酵素は生体膜リン脂質中のHUFA含量の維持に関与することで、鉄・脂質過酸化を介する細胞死であるフェロトーシスに関与することが明らかとなり注目されている。一方で、ACSL4の生体内での発現パターンは臓器・組織あるいは細胞間で異なっており、本酵素の欠損によるHUFAの生体内での代謝や細胞死に与える影響は異なることが考えられる。本課題では、ACSL4の発現を低下させることによりHUFA代謝を制限した際に生体に及ぼす影響を生体及び培養細胞を用いて明らかとすることを目指した。 LPSを投与したACSL4欠損マウスでは野生型マウスと比較して、死亡率が有意に増加した。LPS投与ACSL4欠損マウスで認められた症状は、エイコサノイド産生阻害剤などの前処理により抑制された。現在、これらの研究成果について投稿の準備中である。 マウスのACSL4の発現部位を解析した結果、腎尿細管に高発現していることを見出した。そこで、ヒト腎由来細胞を用いて解析した。ACSL4をノックダウン(KD)させると、DHAを含有するリン脂質のみが特異的に減少した。さらに、ACSL4 KDは、フェロトーシス誘導剤による細胞死も抑制された。フェロトーシスにはACSL4経路により合成されるアラキドン酸やアドレン酸含有PEが関与することが報告されているが、本細胞ではこれら脂質の減少は認められなかった。したがって、本細胞におけるフェロトーシス様細胞死は、従来とは異なる機構を介する可能性が高いことを提唱した。
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