2020 Fiscal Year Research-status Report
血管内皮細胞における低分子量型活性イオウ分子の発現,機能および産生調節
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19K07089
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Research Institution | Tokyo University of Science |
Principal Investigator |
鍜冶 利幸 東京理科大学, 薬学部薬学科, 教授 (90204388)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 血管内皮細胞 / 活性イオウ分子 / 活性イオウ分子産生酵素 / 重金属 / 鉛 / 細胞内シグナル経路 / 小胞体ストレス |
Outline of Annual Research Achievements |
2019年度,培養血管内皮細胞において,有機-無機ハイブリッド分子ライブラリーから抽出した銅錯体Cu10が,重金属や活性酸素などに対する生体防御システムを担う分子として機能している活性イオウ分子の産生酵素の1つCystathionine γ-lyase(CSE)の転写を,ERK1/2経路,p38 MAPK経路およびHIF-1α/HIF-1β経路の活性化によって誘導することを見出し報告した(Fujie et al., Int. J. Mol. Sci., 21, 6053, 2020)。2020度は,有害重金属について同様の検討を行なった。検討した10金属(類)のうち,鉛がCSEタンパク質およびmRNAの発現を強く上昇させることが示された。CSE以外の活性イオウ分子産生酵素(cystathionine β-synthase, 3-mercaptopyruvate sulfotransferaseおよびcysteinyl-tRNA synthetase)には鉛による誘導は認められなかった。鉛は細胞内活性イオウ分子総量を増加させ,特にCysteine persulfideが顕著に増加していた。我々は,鉛が内皮細胞において鉛が小胞体ストレスを引き起こし,JNK-AP1経路の活性化によってシャペロンタンパク質GRP78/94を誘導することを報告している(Shinkai et al., Toxicol. Sci., 114, 378-8211;386, 2010)。そこで,小胞体ストレスシグナルについて検討したところ,鉛がPERK-ATF4経路を活性化することによってCSEの発現を誘導することが明らかになった。この結果は,血管内皮細胞において,天然には存在しない化合物と環境汚染金属の鉛が共通してCSE遺伝子発現を誘導するが,その誘導を介在する細胞内シグナル経路は異なることを示している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究計画は,生体内で血液と直に接しているというきわめて特殊な環境に存在する血管内皮細胞において,重金属や活性酸素に対する防御因子として機能する活性イオウ分子の機能および産生調節を,重金属,細胞増殖因子/サイトカインおよび有機-無機ハイブリッド分子を用いて解析しようとするものである。2019年度は,有機-無機ハイブリッド分子ライブラリーから抽出された銅錯体がERK1/2経路,p38 MAPK経路およびHIF-1α/HIF-1β経路の活性化を通じて活性イオウ産生酵素の1つCSEの転写を誘導することを明らかにし国際学術論文として発表した。2020年度は,重金属について検討し,鉛がPERK-ATF4経路を活性化することによってCSEの発現を誘導し,細胞内cysteine persulfideを増加させることを明らかにした。現在,論文を準備中であり,研究は順調に進捗している。
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Strategy for Future Research Activity |
2019年度は銅錯体Cu10を用いた検討を行い,ERK1/2経路,p38 MAPK経路およびHIF-1α/HIF-1β経路がCESの転写誘導に関与することが示され,2020年度は鉛によるCSEの誘導がPERK-ATF4経路によっても介在されることが明らかになった。すなわち,天然には存在しない化合物と環境汚染金属の鉛が共通してCSE遺伝子発現を誘導するが,その誘導を介在する細胞内シグナル経路は異なることが示された。このように外来性化合物に対する応答は十分に解析されたので,では生体調節分子はどのようになっているのか興味が持たれる。現在,TGF-βおよびFGF-2についての検討に着手しているが,それぞれ独自の,しかもCu10や鉛とも同じでない様式の細胞内シグナル経路によって活性イオウ分子の発現を正に制御することを予備的に見つけている。最終年度は,これを解明する。また,別に,血管内皮細胞の機能調節に活性イオウ分子がどのように関与するのかについても検討を加える予定である。
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[Journal Article] Transcriptional induction of cystathionine γ-lyase, a reactive sulfur-producing enzyme, by copper diethyldithiocarbamate in cultured vascular endothelial cells2020
Author(s)
Tomoya Fujie, Akane Takahashi, Musubu Takahashi, Takato Hara, Asuka Soyama, Kosho Makino, Hideyo Takahashi, Chika Yamamoto, Yoshito Kumagai, Hiroshi Naka and Toshiyuki Kaji
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Journal Title
International Journal of Molecular Sciences
Volume: 21
Pages: 6053
DOI
Peer Reviewed / Open Access
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[Journal Article] Zn(II)2,9-dimethyl-1,10-phenanthroline stimulates cultured bovine aortic endothelial cell proliferation2020
Author(s)
Takehiro Nakamura, Eiko Yoshida, Takato Hara, Tomoya Fujie, Chika Yamamoto, Yasuyuki Fujiwara, Fumihiko Ogata, Naohito Kawasaki, Ryo Takita, Masanobu Uchiyama and Toshiyuki Kaji
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Journal Title
RSC Advances
Volume: 10
Pages: 42327-42337
DOI
Peer Reviewed / Open Access
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