2019 Fiscal Year Research-status Report
疾患発症メカニズムにおける多機能性タンパク質レギュカルチンの重要性の解明
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19K07092
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Research Institution | Meijo University |
Principal Investigator |
村田 富保 名城大学, 薬学部, 准教授 (80285189)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | レギュカルチン / 肥満症 / 癌 / 神経変性疾患 / 骨粗鬆症 |
Outline of Annual Research Achievements |
研究計画ごとに、レギュカルチン(RGN)に関する研究実績の概要を述べる。 (1)肥満症の発症機序におけるRGNの関与の解明: RGN遺伝子を欠損させた3T3-L1細胞を脂肪分化誘導因子で処理した後、脂肪分化の促進に関与する転写因子であるPPARγ及びC/EBPの発現がRGNによって誘導されることを見出した。さらに、RGNがPPARγ遺伝子のメチル化を変化させて、PPARγ遺伝子の発現を制御することも見出した。 (2)癌の発症機序におけるRGNの関与の解明:ヒト腎細胞癌におけるRGNの発現量が、正常腎細胞に比べて、低下していることを見出した。さらに、ヒト腎細胞癌由来のA498細胞にRGNを過剰発現させることにより、細胞増殖が抑制されることを見出した。さらに、RGNが癌抑制因子であるp53やRbを発現誘導することや細胞増殖シグナル因子の活性化を抑制することも見出した。以上の知見から、ヒト腎細胞癌の発症原因の一つにRGNの発現低下が関与することが示唆された。 (3)神経変性疾患の発症機序におけるRGNの関与の解明:RGN遺伝子を欠損させたPC12細胞を神経成長因子によって神経細胞様に分化させた後、小胞体ストレスを惹起させた場合、細胞質で形成されるストレス顆粒の形成が抑制されることを見出した。一方、神経細胞様に分化したPC12細胞にアデノウイルスベクターを用いてRGNを過剰発現させて、小胞体ストレスを惹起させると、ストレス顆粒の形成が抑制されることを見出した。以上の知見から、神経細胞の小胞体ストレス応答反応の一つであるストレス顆粒の形成にRGNが関与することが示唆された。 (4)骨粗鬆症の発症機序におけるRGNの関与の解明:RGNを過剰発現させたマウスマクロファージRAW246.7細胞をRANKLで前処理してLPSで処理すると、破骨細胞の分化が促進されることを見出した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
(1)「肥満症の発症機序におけるRGNの関与の解明」:RGNがエピジェネティックな遺伝子発現を介したPPARγの発現機序に関与することを発見できたことで、RGNによる脂肪分化促進作用を解析するうえで、研究がかなり進展した。 (2)「癌の発症機序におけるRGNの関与の解明」:ヒト腎細胞癌の組織サンプルを用いてRGNの発現が低下していることを見出し、癌細胞の培養実験ではRGNの発現上昇により細胞増殖抑制メカニズムの一端を証明することができ、当初の予定通りに研究は進んでいる。 (3)神経変性疾患の発症機序におけるRGNの関与の解明:研究計画の実施当初に、予備実験データがあったことから、今年度の実験計画は予定通りに進めることができた。 (4)骨粗鬆症の発症機序におけるRGNの関与の解明:本年度は、両側卵巣摘出により作製した閉経後骨粗鬆症モデルマウスを用いて、骨芽細胞と破骨細胞におけるRGNの発現変化を調べたが、再現性のある結果を得ることができなかった。そこで、まずは、細胞培養の実験系で、RGNによる破骨細胞の分化促進のメカニズムの研究からスタートすることにした。
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Strategy for Future Research Activity |
(1)「肥満症の発症機序におけるRGNの関与の解明」:本年度の研究の過程で、脂肪細胞様に分化した3T3-L1細胞に炎症性サイトカインを作用させた場合に、RGN遺伝子が欠損した3T3-L1脂肪細胞では炎症反応が亢進されることを新知見として得た。そこで、今後は、3T3-L1脂肪細胞の炎症反応に対するRGNの保護効果について研究を進める予定である。また、RGNがエピジェネティックな遺伝子発現を制御することを見出したため、脂肪細胞分化に関与する遺伝子群のうちエピジェネティックな遺伝子発現をする遺伝子に対するRGNの影響についても研究を進める予定である。 (2)「癌の発症機序におけるRGNの関与の解明」:本年度の研究で、RGNの発現低下が腎細胞癌の発症原因の一つになりうることを細胞レベルで証明することができたため、今後はRGN遺伝子が欠損したマウスを用いて、腎細胞癌を誘発させた時に腫瘍組織の形成が促進されることをin vivoの実験系で研究を進める予定である。 (3)神経変性疾患の発症機序におけるRGNの関与の解明:本年度の実験系では、副腎髄質細胞由来のPC12細胞を神経成長因子で神経細胞様に分化させた神経モデル細胞を用いて実験を行っているため、今後はiPS細胞から作製した神経細胞でも、同じような現象が起こるか否かを調べる予定である。 (4)骨粗鬆症の発症機序におけるRGNの関与の解明:今後も閉経後骨粗鬆症モデルマウスを用いて骨粗鬆症とRGNとの関連性について実験を進めると共に、細胞培養の実験系でRGNによる骨芽細胞の分化抑制のメカニズムに関する研究もスタートしたいと考えている。
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Causes of Carryover |
申請時には超低温フリーザーの購入を予定していたが、採択時に実験を遂行するうえで不可欠となる超純水製造装置の調子が悪くなりはじめ、最終的には修理が不可能となり、超低温フリーザーよりも価格の低い超純水製造装置の購入に至った。また、他大学で共同研究として細胞培養の実験が同時に進めることができ、細胞培養の実験で使用する高額な試薬・キットの経費を抑えることができ、「次年度使用額」が生じた。そこで、「次年度使用額」は細胞培養の実験で必要となる高額な試薬・キットの購入に「次年度使用額」を充てる予定である。
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Research Products
(4 results)