2020 Fiscal Year Research-status Report
コレステロールエステル化酵素阻害薬によるアルツハイマー病治療薬開発の基盤研究
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19K07093
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Research Institution | Doshisha University |
Principal Investigator |
浦野 泰臣 同志社大学, 生命医科学部, 准教授 (00546674)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | アルツハイマー病 / 脂質代謝 / 細胞死 / ACAT (SOAT) / ドラッグリポジショニング / 24S-hydroxycholesterol / 小胞体ストレス |
Outline of Annual Research Achievements |
目的Iについて小胞体ストレス応答経路のうち、特にPERK経路の活性化に着目し、PERK阻害剤であるGSK2606414の効果を検討した結果、24S-OHC誘導性新生タンパク質の翻訳抑制が一部減弱した。一方、PERK経路の下流のeIF2αのリン酸化も抑制されたが、その効果は部分的であった。そこで、別のeIF2αリン酸化酵素であるGCN2に着目し活性化を確認したところ、24S-OHC処理によってGCN2の自己リン酸化が亢進することが確認された。またGCN2阻害剤であるGCN2iB処理は、eIF2αのリン酸化を一部減弱した。さらにGSK2606414やGCN2iBは細胞死を有意に抑制した。これらの結果から、PERK経路とGCN2経路の協調的な活性化が細胞死機構に重要な役割を果たす可能性が示唆された。 目的IIについて、肝癌由来細胞HepG2細胞における25-OHC誘導性細胞死では、カスパーゼ3の活性化が認められず、さらに全カスパーゼ阻害剤ZVADが細胞死抑制効果を示さなかったことから、カスパーゼ非依存的な細胞死を誘導することが明らかとなった。また、抗酸化剤に細胞死抑制効果が見られ、脂質過酸化物の増加が認められたことからフェロトーシス様の細胞死を誘導している可能性が明らかとなった。さらに運動ニューロン細胞としてNSC34細胞を用い、25-OHCの細胞毒性を検討したところ、HepG2細胞と同様、カスパーゼ非依存的な細胞死を誘導し、ACAT阻害剤が細胞死抑制効果を示さないことが明らかとなった。 目的IIIについて、K-604処理はAβ産生を抑制するとともにAβ産生酵素の基質であるC99の減少も引き起こすことを見出した。また、その減少が、リソソームに存在するプロテアーゼの阻害剤で抑制されたことから、リソソームにおけるC99の分解亢進がAβ産生を抑制に導く可能性を明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
目的Iについては、24S-OHC誘導性細胞死のメカニズムとして、昨年度までの結果から、小胞体ストレス応答や小胞体膜破綻、新生タンパク質合成抑制を誘導することで、カスパーゼ非依存的に非典型的なプログラム細胞死を誘導することを示してきたが。今年度は小胞体ストレス応答のうちIRE1経路に加えて、PERK/eIF2α経路の活性化が細胞死誘導機構に重要であることを明らかにした。さらに小胞体ストレス応答に加えてGCN2/eIF2α経路も活性化していることを見出すことができた。 目的IIについて、筋萎縮性側索硬化症の神経細胞や、肝癌細胞で増加し、細胞死を誘導することが報告されている25-OHCが誘導する細胞死はACAT非依存的であることを明らかにし、酵素的に産生されるオキシステロールである24S-OHCや25-OHCが誘導する細胞死は、必ずしもACAT依存的でないことを明らかにし、細胞の種類によって異なる細胞死誘導機構を示すことを明らかにした。さらにアポトーシスやネクローシスとも異なる特殊な細胞死形態を示すことを見出すことができた。 目的IIIについて、K-604の効果がC99の減少を引き起こす可能性が示唆されたことから、その分解機構に着目し、C99のリソソームにおける分解の重要性を見出すことができた。以上のことから、交付申請書に記した目的における2020年度の計画は順調に進展していると評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
目的Iについて、新生タンパク質の翻訳抑制機構と細胞死の関連について、PERKとGCN2経路に共通する重要なシグナル分子であるeIF2αの活性化機構であるIntegrated stress response(ISR)に着目し、その阻害剤の効果や、eIF2αの活性化の下流にある種々の細胞内イベントについて解析を進める。目的IIについて、オキシステロールによるフェロトーシス誘導機構の解析を進めるほか、筋萎縮性側索硬化症を想定し、運動ニューロン細胞株に加えて、髄鞘形成細胞の細胞株を用いて、25-OHC誘導性細胞死機構について解析する。目的IIIについて、リソソームにおけるタンパク質分解機構の関与について、CHO細胞やSH-SY5Y細胞を用いて検証する。
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Causes of Carryover |
(理由)試薬購入等における端数として次年度持ち越し分が生じた。 (使用計画)研究費の使用計画として、今年度に引き続き次年度においても培養細胞株を用いた実験を行うため、当初の計画通り細胞培養用試薬の購入を計画している。またsiRNAや阻害剤等など生化学、分子生物学実験試薬についても購入する。特に抗体の購入費の割合が大きくなることが計画される。
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Research Products
(6 results)