2020 Fiscal Year Research-status Report
神経伝達経路をターゲットとした掻痒治療薬の創薬基盤の創設研究
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19K07104
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Research Institution | Kitasato University |
Principal Investigator |
田辺 光男 北里大学, 薬学部, 教授 (20360026)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 掻痒 / KCNQチャネル / 抑制性 / 疼痛 / 脊髄 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題は、KCNQ (Kv7) K+チャネル(活性化閾値が低く不活性化しないM電流に関わるK+チャネル)の掻痒調節への関与とそのメカニズムの解明を目的としている。昨年度は、ICR系雄性マウスを用い、腹腔内投与したKCNQチャネル開口薬のretigabineが首背部に投与した起痒物質のcompound 48/80誘発(ヒスタミン依存性)およびクロロキン誘発(ヒスタミン非依存性)のscratching(引っ掻き行動)に対して抑制作用を示す結果を得ている。その一方、retigabineを起痒物質投与の15分前に脊髄髄腔内投与した場合にscratchingが抑制されなかったことから、今年度は起痒物質投与の5分前にretigabineを投与して再検討することから開始した。しかし、この場合でもretigabineはcompound 48/80誘発およびクロロキン誘発のscratchingを抑制しなかった。脊髄髄腔内投与は腰部膨大部付近から行っているため、痒みシグナルが坐骨神経を介して腰髄に入力するcalfモデルで再検討を行うべく、研究室でのモデル確立を行った。 また、KCNQチャネルは疼痛調節にも関与し、retigabineが鎮痛作用を示すことは既に報告されており、我々も確認済である。本研究課題では、痛みと痒みを区別して同時に測定できるマウスのcheekモデルを用い、痛みと痒みへのKCNQチャネルの関与の違いあるいは同等性を明らかにすることも目的としている。昨年度は、先行研究などで用いられている観察方法では十分に行動が確認できない問題点があることがわかり、本年度は観察方法を改良して正確な行動確認ができるようになった。さらに、慢性掻痒モデルとして、DNFB塗布によるIV型アレルギー慢性掻痒モデルも研究室内で安定したモデルの確立も達成できた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
昨年度の脊髄髄腔内投与の結果を受け、本年度はretigabine投与を起掻物質投与の5分前に変更したが、掻痒抑制効果は認められなかった。用いた急性掻痒モデルでは起痒物質を首背部に投与するため、腰髄部分でretigabineが高濃度となる脊髄髄腔内投与との組み合わせが適していない可能性が考えられた。そこで、痒みシグナルが腰髄に入力するcalfモデルでの検討に切り替え、モデルの確立がほぼ終了した。一方、痛みと痒みへのKCNQチャネルの関与の度合い・相違点を明らかにするためのcheekモデルについては、昨年度に試みた先行研究の観察方法で明らかになった問題点の改善に成功することができた。また、DNFB塗布によるIV型アレルギー慢性掻痒モデルも確立した。これらモデルの確立に本年度は時間を費やし、retigabine投与の直前まで到達したが、実施が次年度にずれ込んだことから「やや遅れている」と自己評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
現在までの進捗状況にも記したが、本年度は動物モデルの研究室内での確立に時間を要した。Calfモデルでは、calfに投与するカプサイシン、compound 48/80あるいはクロロキンが、licking(痛みを反映)やbiting(痒みを反映)を引き起こす。また、cheekモデルでは、これら発痛物質および起痒物質がwiping(痛みを反映)やscratching(痒みを反映)を引き起こす。これらモデルの確立がほぼ終了したため、本年度はretigabineの評価を行う。すなわち、calfモデルではretigabineの脊髄髄腔内投与と組み合わせて脊髄がretigabineの作用点である可能性を更に追求し、cheekモデルでは痛みと痒みへのKCNQチャネルの関与の度合い・相違点を明らかにする。また、DNFB塗布によるIV型アレルギー慢性掻痒モデルも確立済であるため、モデル成立後のretigabineの全身投与の他、モデルが出来上がっていく過程でのretigabineの連続全身投与を行う。 慢性疼痛モデルから後根付き脊髄スライス標本を作製して後根刺激誘発の興奮性シナプス後電流(EPSCs)に対するretigabineの効果も検討予定であった。DNFB塗布によるIV型アレルギー慢性掻痒モデルも首背部への塗布で作製するため、昨年度までの急性掻痒モデルの結果も考慮すると、脊髄腰部から作製するスライス標本との組み合わせでシナプス伝達レベルでの詳細な解析が不可能となる可能性もある。そこで、対応策として、脊髄スライス標本において脊髄レベルで痒みの伝達に関わるgastrin-releasing peptide (GRP)を適用して引き起こされる膜電位変化に与えるretigabineの作用を調べる電気生理学的研究に切り替えることも考慮している。
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Causes of Carryover |
当初予定では電気生理学的研究に使用する三次元マニピュレーターを更新目的で購入する予定であった。しかし、電気生理学的研究で使用するアンプの共同購入を代わりに行ったためその差額が寄与していると考えている。
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Research Products
(1 results)