2019 Fiscal Year Research-status Report
Depolarization-induced contraction of vascular smooth muscle via novel RhoA/Rho-kinase activation.
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19K07108
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Research Institution | Meiji Pharmaceutical University |
Principal Investigator |
三田 充男 明治薬科大学, 薬学部, 教授 (50211587)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 血管平滑筋収縮機構 / カルシウム感受性亢進機構 / 低分子量Gタンパク質 / Rhoキナーゼ / Pyk2 |
Outline of Annual Research Achievements |
ラット尾動脈平滑筋におけるCa2+依存性proline-rich tyrosine kinase 2 (Pyk2)を介したRhoA/Rhoキナーゼ(ROK)活性化による新たな血管平滑筋収縮調節機構を解明し、新たな作用機構を持つ循環器系疾患治療薬の創薬につなげることを目的とし、研究実施計画に基づき遂行している。2019年度は以下のことが明らかとなった。 (1)Pyk2はCa2+依存性にTyr402の自己チロシンリン酸化により活性化され、リン酸化されたPyk2は他のタンパク質と相互作用する。細胞外Ca2+を除去した条件下及びカルモジュリン(CaM)阻害薬W-7存在下では、高K+刺激によるPyk2のTyr402リン酸化は抑制された。一方で、ネガティブコントロールであるW-5によってもPyk2のリン酸化は抑制された。このことより、高K+刺激によるPyk2活性化には細胞内Ca2+の上昇が必要であるが、CaMは関与しないと考えられる。 (2)カルシウムイオノフォアであるイオノマイシン刺激ではゆっくりとした持続的な収縮反応を観察できるが、ROK阻害薬HA-1077及びPyk2阻害薬サリチル酸やPF-431396により、収縮及びLC20リン酸化の持続相のみが抑制された。一方で、MLCK阻害薬ML-9では収縮及びLC20リン酸化の初期相と持続相共に抑制された。このことより、Ca2+流入による収縮の持続相のみがPyk2を介したRhoA/Rhoキナーゼ(ROK)活性化機構によるものであることが強く示唆された。 (3) Pyk2と共役しRhoAの活性調節に関与する可能性のあるタンパク質としてPI3キナーゼ(PI3K)が考えられる。高K+収縮、Pyk2リン酸化及びRhoA活性化は、PI3K阻害薬ウォルトマンニン及びLY294002で抑制された。このことより、Ca2+依存性Pyk2活性化にPI3Kの関与の可能性が示された。 (4)尾動脈血管平滑筋において発現しているRhoA活性化に関与するRhoGEF及びRhoGAPの同定に関して現在検討中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
昨年4月に大学院博士課程に入学した学生及び卒業研究の学生が、尾動脈血管平滑筋標本の作成手技及び実験手技の修得に多少時間を要した点もあり、進捗状況としては当初の研究実施計画より若干の遅れが出ている。しかし、実施計画に従い、Pyk2の活性化に対するCa2+及びカルモジュリンの役割を明らかにすることができた。また、当初の計画では2020年度以降に考えていたPyk2活性化及びRhoA活性化におけるPI3キナーゼの関与についても基礎的データーは得ることができた。ただ、本年3月からのCOVID-19の蔓延により、計画の後半部分である尾動脈平滑筋に存在するRhoGEF及びRhoGAPの同定に関しては、本学の方針で、研究が開始して間もなく中断してしまったため、遅れが生じている状況である。しかし、当初の計画の前半部分は順調に遂行され、今後の研究の方向性として参考になるべき成果は得られている。感染も収束の兆しが見えてきており、研究も始めることができるようになったので、実施計画の遅れを取り戻すべく今年度は実施計画に基づいて研究を遂行する予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
(1)現在中断している尾動脈血管平滑筋に存在するRhoA活性化に関与しているRhoGEF及びRhoA不活性化に関与しているRhoGAPをリアルタイムPCR法及びウェスタンブロット法を用いて同定を行う。さらには、免疫沈降法を用いて高K+刺激後のリン酸化されたPyk2と相互作用するRhoGEF及びRhoGAPの同定を行う。 (2)昨年度の研究より、Pyk2と共役しRhoAの活性調節(RhoGEFの活性化)にPI3Kが関与する可能性が考えられる。そこで、関与するPI3KアイソフォームについてRT-PCR法、ウェスタンブロット法及び免疫沈降法を用いて検討し、PI3K、Pyk2、RhoA活性化までの情報伝達機構に関わるタンパク質について明らかにする。 (3)さらにこの結果で明らかになった情報伝達系に関与するタンパク質をsiRNA導入によりノックダウンあるいは各遺伝子導入により過剰発現させた培養血管平滑筋細胞A7r5を用いて、高K+刺激によるPyk2リン酸化、RhoA活性化、MYPT1リン酸化及びミオシン軽鎖リン酸化の変化について検討し、どのようにCa2+依存性Pyk2がRhoA/ROK経路を導くかを解明する。また、この情報伝達系を阻害する薬物の効果を検討し、最も有効な薬物を探索する。 以上の研究により、血管平滑筋におけるCa2+依存性RhoA/ROK活性化に関係するPyk2を介した新しい情報伝達機構が解明でき、さらには、血管平滑筋の緊張を調節する従来から用いられている受容体遮断薬やチャネル阻害薬のような膜タンパク質に作用する既知の薬物とは異なる新たな作用点をもつ治療薬を探索することができる。 そして本研究により得られた結果を取りまとめ、学会及び論文等でこの成果の公表する。
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Causes of Carryover |
年明けまでは順当に研究を進めていたが、2月頃のから新型コロナウイルス感染症の影響で、スタッフの安全面を考慮し、学会参加の自粛、試薬や動物購入を控えた。特に3月に入ってからの感染症蔓延のため、研究も中断せざるを得ない状況で、全額が使用できなかった。そのため、実施計画の遅れを取り戻すべく研究を開始し、残額は次年度に繰越し、当該年度分と合わせて使用する。
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Remarks |
成井 繁、野澤(石井)玲子、三田充男、在宅療養分野における精神的ケア ー薬剤師が行う患者・家族の心のケアと薬物治療ー 、在宅薬学、7(1)、11-16 (2020).
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