2021 Fiscal Year Research-status Report
慢性掻痒の神経伝達機構における炎症性因子の役割解明
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19K07111
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Research Institution | Kansai University of Health Sciences |
Principal Investigator |
深澤 洋滋 関西医療大学, 保健医療学部, 准教授 (70336882)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
木口 倫一 和歌山県立医科大学, 薬学部, 准教授 (90433341)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 掻痒 / ガストリン放出ペプチド / DREDD / 脊髄 / 後角 / 性差 |
Outline of Annual Research Achievements |
これまでの研究により、痒み誘発物質による痒みの伝達には、痒み特異的なGRP受容体(GRPR)の役割が重要であることを明らかにし、その活性化には、脊髄後角でのガストリン放出ペプチド(GRP)の放出およびグルタミン酸の遊離が関与することを報告している。しかし、脊髄後角でのGRPを放出するソースについては大きく意見が分かれており、現在のところ研究者間で物議を醸している。そこで今年度は、designer receptor exclusively activated by designer drugs(DREDD)システムを活用し、GRP産生細胞にヒトGq共役型ムスカリン3受容体(hM3Dq)を発現させることにより、中枢神経系におけるGRP産生細胞の分布を可視化した。さらにhM3Dqの特異的リガンドであるclozapine-N-oxide (CNO)を投与することによりGRP産生細胞の活性化を図り、慢性掻痒病態モデルマウスにおける中枢神経でのGRPの遊離が引き起こす影響について検討を行い、以下の諸点を明らかにした。 ① GRP産生細胞の活性化は、雌雄の区別なく引っ掻き行動を引き起こし、脊髄後角で有意な神経活動が確認されたことから、脊髄後角におけるGRP産生細胞が痒みの伝達に重要であることが明らかとなった。 ② 脊髄内および脳内のGRP産生細胞の活性化の違いを検討したところ、同様に雌雄のマウスに経時的な引っ掻き行動の増加を確認できた。また、脳内におけるGRP産生細胞の分布を確認したところ、顔面神経核に強い陽性反応が認められた。 ③ 痒み伝達に関与する末梢神経を無効化した状態で、中枢でのGRPの遊離による引っ掻き行動の有無を検討したところ、コントロールと同様、引っ掻き行動が認められたことから、中枢神経にはGRP産生介在ニューロンが存在し、その活性化が引っ掻き行動に強く関与することが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ジフェニルシクロプロペノン誘発接触性皮膚炎モデルマウスやクロロキン誘発掻痒モデルマウスを用いた掻痒モデルマウスにDREADDシステムを応用することで、痒みの伝達には脊髄後角でのGRP-GRPRシステムの関与を明確なものとし、GRPのソースについても中枢神経における介在ニューロンであることが強く示唆できた。さらに、これまで報告されていない掻痒における性差についても併せて検討を行い、掻痒の発現には性差がみられないことも明らかにしている。このように、掻痒における神経伝達機構において、中枢神経でのGRP-GRPRシステムの重要性を中心に、中枢神経での痒み伝達に関する新たな知見の報告を積み重ねているため
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Strategy for Future Research Activity |
上記の成果を踏まえ、今後の推進方策は以下の3点である。 ① 慢性掻痒病態モデルマウスにおける中枢性神経膠細胞の関与についての検討 ② 脊髄におけるGRP-GRPRシステムを調節する新規責任因子の探究および同定 ③ 新規責任因子の機能解析ならびにそれを標的とした治療戦略の立案
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Causes of Carryover |
COVID-19の蔓延にともない、旅費が使用できなかったことに関わる残額である。次年度には消化できる見通しである。
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Research Products
(1 results)