2020 Fiscal Year Research-status Report
細胞内局在性ムスカリン受容体の生体における機能解析
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19K07117
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Research Institution | Asahikawa Medical College |
Principal Investigator |
宇和田 淳介 旭川医科大学, 医学部, 助教 (70580314)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
矢澤 隆志 旭川医科大学, 医学部, 講師 (00334813)
加藤 剛志 旭川医科大学, 医学部, 准教授 (60194833)
谷口 隆信 旭川医科大学, 医学部, 教授 (60217130) [Withdrawn]
益岡 尚由 金沢医科大学, 医学部, 准教授 (80509307)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | ムスカリン受容体 / GPCR / acetylcholine |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、本来細胞表面に局在することで細胞外からのアセチルコリンを受容し機能すると考えられてきたムスカリン受容体のM1サブタイプについて、細胞内部における局在とその機能性を明らかにすることを目的としている。本研究年度における最も特筆すべき成果は細胞内部に局在するムスカリンM1受容体の活性化の様子をリアルタイムに検出することに成功した点である。具体的にはムスカリンM1受容体に循環変異GFP(cpGFP)を導入し、活性化に伴う構造の変化をGFP蛍光量の変化として検出するものである。興味深いことに、このムスカリンM1を単独で培養細胞に発現させた場合、アセチルコリンによる刺激は細胞表面の活性化しか示さなかった。しかし、同時にトランスポーターXを共発現した場合、アセチルコリン添加によって細胞表面と細胞内部のムスカリンM1受容体の活性化を示す結果が得られた。このことは細胞内のムスカリンM1受容体が実際に内因性リガンドであるアセチルコリンによって活性化されうることを証明するものであり、同時に細胞内へアセチルコリンを取り込むトランスポーターの有力候補を得たことを意味する。このトランスポーターXが実際にアセチルコリンを取り込む機能を有することは、昨年度に確立した放射性同位体ラベルのアセチルコリンによる取り込み検出実験系により確認している。その他、細胞内ムスカリンM1受容体の活性化の結果として起こるMAPキナーゼ系の活性に至るメカニズムとして、そのシグナリングの上流を調べたところ、ある受容体型チロシンキナーゼの関与を示す結果を得た。現在、細胞内ムスカリンM1受容体活性化検出系、およびトランスポーターの研究と並行して、そのシグナリングについても更に研究を展開して細胞内ムスカリンM1受容体の全体像を明らかにするよう、研究を重ねている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の目的の一つであった、遺伝子編集による細胞内M1受容体を減少させる点変異導入マウスの作製と解析については、研究施設における動物実験施設の改装など、いくつかの理由により延期して、一部研究計画を変更した上で進めているが、特に当該年度においては、細胞内ムスカリンM1受容体の活性化をリアルタイムで直接的に検出するという、非常に重要な結果を得ることができた。アセチルコリンはその分解されやすさなどの理由からなかなか細胞内で機能しうることについて理解されづらいところがあり、今回の直接的な細胞内ムスカリンM1受容体の活性化検出は、これまでの研究状況を大きく一新する説得力を持った結果であると考えている。その他、アセチルコリンのトランスポーターや、細胞内シグナリングについてなど、細胞内M1受容体の全容解明に繋がるいくつかの重要な成果が得られており、研究は概ね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
細胞内M1受容体を欠失したマウスの作出については、引き続き研究環境の変化など状況を見極め判断する。今後についても、本年度で得られたいくつかの重要な知見を更に探求する。特に細胞内ムスカリンM1受容体活性化のリアルタイム検出系を活用して、細胞内におけるコリン伝達系の特性を明らかにし、生体における細胞内ムスカリンM1受容体の研究へ繋げることができるよう詳細に解析を進める。
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Causes of Carryover |
状況により見合わせていた遺伝子改変マウスの作製に向けての予備的な研究費として次年度に一部繰越している。その他の方向性で進めていた研究の進展により、計画の一部変更の可能性があり、次年度はその状況を見極めながら、マウス作製の予算を進展の見られる研究の方向性へ振り分ける可能性を考慮に入れつつ計画を進める予定である。
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Research Products
(6 results)