2021 Fiscal Year Annual Research Report
認知症リスクファクターである加齢性難聴の病態解明と予防薬の創出に関する研究
Project/Area Number |
19K07131
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Research Institution | Setsunan University |
Principal Investigator |
荻田 喜代一 摂南大学, 薬学部, 教授 (90169219)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
米山 雅紀 摂南大学, 薬学部, 准教授 (00411710)
山口 太郎 摂南大学, 薬学部, 講師 (30710701)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 聴覚障害 / 加齢性難聴 / 予防薬 / レスベラトロール / クロロゲン酸 / サプリメント |
Outline of Annual Research Achievements |
『後天的な難聴の発症が認知症の最大のリスクファクターである』との知見から、加齢性難聴の予防・克服が高齢化社会にとっての大きな課題である。我々はこれまでに騒音性難聴モデル(地下鉄の走行音程度の騒音を慢性的に曝露した動物)を作成し、後天的難聴モデルとして予防薬の開発に用いてきた。本研究では、比較的早期に自然発生的に聴覚障害を惹起するSAMP1マウスを用いて、加齢に伴う聴力低下に対する試験化合物投与の効果について解析した。SAMP1マウスは8週齢より少なくとも24週齢にかけて徐々に聴力低下が生じ、24週齢時において4 kHzで約15 dB、12 kHzで約30dB、20 kHzで約40 dB低下した。これに対して、飼育期間中のクロロゲン酸、レスベラトロール摂取は加齢に伴う聴力低下を有意に抑制した。しかしながら、カテキン摂取は加齢に伴う聴力低下に影響を及ぼさなかった。 SAMP1マウスは4週齢時と比較して24週齢時で炎症性サイトカインIl1bの有意な増加が認められた。これに対して、レスベラトロール摂取はこの加齢に伴うIl1bの増加を有意に抑制した。また、SAMP1マウスは4週齢時と比較して24週齢時で12-20 kHzの音を受容する領域の内有毛細胞に存在する蝸牛神経間とのシナプス数が約25%減少した。これに対して、レスベラトロール摂取は加齢に伴うシナプス数の減少を有意に抑制した。しかしながら、カテキン摂取は加齢に伴うシナプス数の減少に影響を及ぼさなかった。以上の結果より、クロロゲン酸およびレスベラトロールは、炎症性サイトカインIl1bの発現減少および有毛細胞・蝸牛神経間シナプス数の減少を抑制して加齢性難聴を予防することが明らかとなった。
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