2020 Fiscal Year Research-status Report
細胞性粘菌由来の生物活性物質をシードとした創薬~新規抗がん剤と抗菌薬の開発~
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19K07139
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Research Institution | Juntendo University |
Principal Investigator |
久保原 禅 順天堂大学, スポーツ健康科学研究科, 教授 (00221937)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
菊地 晴久 東北大学, 薬学研究科, 准教授 (90302166)
原 太一 早稲田大学, 人間科学学術院, 教授 (00392374)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 細胞性粘菌 / DIF / 抗がん剤 / 抗菌薬 / マラリア / 糖代謝 / 創薬 |
Outline of Annual Research Achievements |
細胞性粘菌Dictyostelium discoideum(以後「粘菌」)は、発生生物学や細胞生物学のモデル生物として世界中で利用されている。我々は粘菌の分化誘導因子 DIF-1(塩素を含む化合物)とその誘導体(以後単に「DIFs」)をリード化合物とした新規抗がん剤と抗菌薬の開発とそれらの作用機序解析を進めている。さら に、DIFsの有する様々な生物活性についても探索・研究している。2021年度、我々は以下を明らかにしてきた。 1)トリプルネガティブ乳がん (TNBC)は難治性がんである。多くのTNBC細胞はPD-L1を発現しており、免疫からの攻撃を回避している可能性がある。我々は、TNBCモデル細胞であるMDA-MB-231細胞のPD-L1発現に対するDIFsの効果を検討した。その結果、DIFsはPD-L1発現には影響しなかったが、いくつかのDIFsがPD-L1の糖鎖修飾を阻害することが示された。PD-L1が機能するためには糖鎖修飾が重要であるため、我々の検討結果は、DIFsがTNBCの免疫療法に応用できる可能性を示唆している。現在、我々はDIFsの作用機序解析を進めている。 2)我々はマラリア原虫の増殖に対するDIFsの効果をin vitroで検討し、DIFアミド誘導体が強力な抗マラリア原虫活性を有することを見いだした。また、これらのDIF誘導体はクロロキン耐性株やアルテミシニン耐性株に対しても強力な増殖抑制活性を示した。 3)DIFsは哺乳類細胞の糖代謝を促進する活性を有しているが、その作用機序の詳細は不明である。そこで、マウス3T3-L1細胞を用いて、DIFsの作用機序解析を進めた。その結果、DIFsは少なくとも一部AMP kinaseの活性化を介して細胞の糖代謝を促進することを見出した。 4)より強力な抗菌活性を有するDIF誘導体の合成を進めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
目的とする「抗がん剤と抗菌薬開発」並びに「DIFの作用機序解析」はほぼ順調に進んでいる。また、DIFの有する新たな生物活性も発見され、それらの解析も進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
研究は順調に進んでおり、今後も以下を継続する。 1)DIFsをリード化合物とした抗がん剤と抗菌薬の開発。即ち、より有効・有用なDIF誘導体の開発。 2)DIFsの作用機序の解析。 3)DIFsの有する新たな生物活性の検討と、それらの作用機序解析。
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Causes of Carryover |
実験結果を検討し、再検討の必要性が生じたため、当初予定していた生化学的実験を先送りした。 次年度初めには実施する予定。
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