2020 Fiscal Year Research-status Report
新規天然資源の開発とアルツハイマー病治療薬を目指した化合物の探索
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19K07143
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Research Institution | Meiji Pharmaceutical University |
Principal Investigator |
高取 薫 (木下薫) 明治薬科大学, 薬学部, 教授 (40247151)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 抗アルツハイマー病 / BACE1阻害活性 / アミロイドβ凝集抑制活性 / サポニン / 海洋由来真菌 / サボテン科植物 / エピジェネティック制御 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度も一年目に引き続き、休眠遺伝子を発現させるエピジェネティックな手法を用い,海洋由来真菌から新たな二次代謝産物の産生を目指す研究を行った。研究室保有の海洋由来真菌12種とHDAC阻害剤5種[N-hydroxy-N’-phenyloctanediamide (SAHA), sodium valproate (VPA), splitomicin (SP), sodium phenylbutyrate (SPB), nicotinamide (NA) ]を用いたスクリーニング(計60種)を行った。培養は、昨年のプレ培養時の結果を踏まえ、26°C、暗所、静置の条件で培養を行った。それぞれの培地は酢酸エチルで抽出し、菌体はクロロホルム-メタノール(1:1)混液で抽出した(計120種のエキス作成)。得られた各エキスの二次代謝産物を、HDAC阻害剤を添加しない場合とTLCおよびLC/MSにより比較した。その結果、9種のエキスに新たな化合物の産生が確認できた。そのうち、MPUC313にSPを添加した条件で培養した培地の酢酸エチル抽出エキスから、新たに産生されたと考えられる化合物を単離した。構造解析の結果、HDAC阻害剤SPの誘導体であることが明らかとなった。また、MPUC239とMPUC247(SP添加)においても順次大量培養を行い、化合物の単離を目指した。 サボテン科植物の入鹿(Stenocereus eruca)からサポニン成分の探索を行い、新たなサポニンを単離した。新たに単離したサポニンと、昨年度単離したサポニンのBACE1阻害活性、Aβ凝集抑制活性およびヒト神経芽細胞腫を由来とするSH-SY5Y細胞系を用いたAβによる神経細胞障害に対する保護作用を評価した。また、朝霧閣(Stenocereus pruinosus)から単離、保有していたサポニンの活性を評価し、論文としてまとめた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
コロナ禍、学生が実験できる人と日数が半分以下となり、実験が思うように進まなかった。TLCまたはLC/MSによる分析で新たな化合物の産生が確認できた9種の菌とHDAC阻害剤の組み合わせ条件による大量培養が思うように進まなかったことと、大量培養により得られるエキス量がきわめて少なかったことから、新たに産生された化合物の単離、構造決定が進まなかった。MPUC313にHDAC阻害剤としてsplitomicinを添加したものの大量培養を行い、培地の酢酸エチル抽出エキスから新たに産生されたと考えられる化合物を単離したが、構造解析の結果、新たに産生された化合物はHDAC阻害剤であるsplitomicinの誘導体であることが明らかとなった。菌が持つ生合成遺伝子の発現により新たな二次代謝産物を見いだすという目的とは異なる結果となってしまった。 また、サボテン科植物の入鹿(Stenocereus eruca)からの新たなサポニン成分の単離も思うように進まなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
海洋由来真菌、MPUC313とMPUC169にそれぞれsplitomicin (1 mM)およびMPUC278にN-hydroxy-N’-phenyloctanediamide (SAHA) (1 mM)を添加した条件で得た培地の酢酸エチル抽出エキスに新たな二次代謝産物の産生が認められたことから、今後、さらに大量培養を行い、新たに産生された二次代謝産物の単離と構造決定を行い、BACE1阻害活性とAβ凝集抑制活性を検討する。また、引き続き一次スクリーニングとしてなるべく多くの海洋由来真菌にHDAC阻害剤を添加し、新たな二次代謝産物産生の有無を検討する予定である。 また、サボテン科植物からのサポニンの探索については、入鹿(Stenocereus eruca)に加え、その他のサボテン数種からもサポニンを単離し、その構造を明らかにするとともに、BACE1阻害活性、Aβ凝集抑制活性、さらにヒト由来神経細胞株SH-SY5Yを用いたAβによる神経細胞障害に対する保護作用の検討も行う予定である。 来年度が、研究最終年度であることから、得られた結果を学会発表するとともに論文にまとめられる結果を得ていきたいと考えている。
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Causes of Carryover |
コロナ禍で、全体的に実験が思うように出来ない状況下が続き、海洋由来真菌にHDAC阻害剤を添加した液体培養の一次スクリーニングや、その後の大量培養と新たな二次代謝産物の探索を行うことがあまり出来なかった。そのため、使用するHDAC阻害剤の購入量も予定より少なかく、また、単離化合物のBACE1阻害活性とAβ凝集抑制活性の評価も予定通りに行うことが出来ず、活性評価用のBACE1阻害活性評価キットやAβの購入が予定より少なかった。また、分離のための溶媒、分離用の担体やHPLCカラム等の購入も少なかった。以上の理由より、次年度使用額が生じた。
次年度は最終年となるため、新たな化合物の産生が確認できた9種の菌とHDAC阻害剤の組み合わせ条件による大量培養を行い、化合物を単離、構造決定する。また、その他の菌についても検討し、海洋由来真菌のエピジェネティック制御により新たな産生化合物を見いだすことを目指す。単離化合物のBACE1阻害活性とAβ凝集抑制活性を行うために、BACE1阻害活性評価用のアッセイキットの購入とAβの購入に予算を当てる。さらにヒト由来神経細胞株SH-SY5Yを用いたAβによる神経細胞障害に対する保護作用の検討を行うためのAβ42の購入に予算を当てる予定である。
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Research Products
(4 results)